【プレスリリース】2026年度新規認定より「輸入木質バイオマス発電」を FIT 制度対象外へ~経済産業省の決定を評価する一方、既存事業者への規制強化を要請

2025年02月12日お知らせ

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 環境問題に関する調査・研究や政策提言を行う一般財団法人 地球・人間環境フォーラム、熱帯林保全活動を行うウータン・森と生活を考える会、木質バイオマスの持続可能な利用を目指すバイオマス産業社会ネットワーク、米NGOMighty Earth4団体は、202523日に経済産業省の調達価格算定委員会が発表した、2026年度以降の再生可能エネルギー固定価格買取(FITFIP)制度の新規認定において、輸入燃料を中心とする一般木質等(1万kW以上)と液体燃料を支援の対象外にする提案について、歓迎の意向を表明します。

今後、新規認定に留まらず、既存のバイオマス発電事業者を対象に、輸入木質バイオマス発電による森林減少・劣化やCO2排出量の多さ、地域社会へ影響という課題に抜本的な対処が行われることを期待します。

また、本日2月12日、FIT制度による輸入木質バイオマス発電への支援中止を求める日本国内からの署名(約2万名分)北米NGOによる書簡を、武藤容治経済産業大臣へ提出しました。

<今回の経産省の提案の前提となる議論>

 今回の経産省の提案の前提として、調達価格算定委員会ではバイオマス発電へのFIT/FIP制度での支援が適切かどうか検討が行われ、以下の状況が認められました。

バイオマス発電のコストの大半が燃料費であり、将来的な自立が見通しづらいこと

・国際市場や円安により一般木質(1万㎾以上)と液体燃料の新規案件形成は進まないこと

2022年以降入札件数0件が続いていること

・需給調整市場や容量市場の活用でFIT/FIP制度に寄らず収益を上げることが期待されること

また、今年度の調達価格算定委員会ではFIT/FIP制度の支援終了後について議論が行われ、輸入燃料に依存する大規模バイオマス発電所は「他の再エネと比較して再エネ電源としての自立化が相対的に難しい」こと、そのためFIT支援終了後に(化石燃料による)火力発電所へ転換することや事業廃止に至ることを抑制する必要」「バイオマス比率の維持を指導」などが議論されています。

<経産省の今回の方針転換の主なポイント>

 今回の経産省の提案では、支援から外れる対象が2026年度以降の新規認定のみに限定されています。しかし、2018年にFITによるバイオマス発電が入札制に変更されて以降、一般木質発電所(1万㎾以上)の新規認定は1件に留まり、2022年以降は新規の認定案件は存在しません

 既にFIT/FIP認定済みのバイオマス発電所のうち、輸入燃料に依存する一般木質(1万㎾以上)と液体燃料の合計は、130660kWに上り、これは2030年エネルギーミックスのバイオマス発電水準(800万㎾)の82%に及びます。今回の提案では、既存の認定バイオマス発電所には触れておらず、これらが燃やしている輸入バイオマス燃料(2023年度実績:木質ペレット581万トン、パーム核殻587万トン)も、FIT/FIPによる買取期間の20年間が終了するまで、引き続き輸入・燃焼されることになります。

<バイオマス発電の問題点…石炭火力より多いCO2排出、低い発電効率とコスト高、生産地の課題>

 バイオマス発電は、FIT制度によりカーボンニュートラルな再生可能エネルギーとして、消費者負担の下で推進されてきましたが、木質バイオマス(木材)を燃やした際のCO2排出量は、石炭火力よりも多いことが分かっています。またエネルギー効率が2030と悪く、燃やした木材の78割が熱として放出され、その多くがただ排熱として捨てられています。バイオマス発電のコストの7割が燃料費で、輸入燃料のために年間3,000億円を超える賦課金が海外に流出しています。さらに北米の生産地では原生林伐採や大量の環境法違反が、最大の輸入先ベトナムでは認証偽装が問題になってきました。

このように様々な観点から、輸入木質バイオマス発電は再エネとして不適格で持続可能でないという問題が、私たち4団体を含む、国内外の環境団体から指摘されています。新規だけでなく既認定についても、持続可能性、エネルギー自給、賦課金の海外流出の観点から早急に見直すべきであり、FIT/FIPの支援対象から外すことが求められます。

<輸入バイオマスの支援停止を求め、約2万名の署名を経済産業大臣へ提出>

2025年212日(水)、地球・人間環境フォーラムとウータン・森と生活を考える会、バイオマス産業社会ネットワーク、Mighty Earthは、FIT制度による輸入木質バイオマス発電の支援中止を求める署名を武藤容治経済産業大臣に提出しました。

この署名は、202412月から、オンライン署名サイト「Change.org」で一般の方々へ広く呼びかけを開始し、19,596 件(2025211日)もの声が集まりました。

北米のNGOを中心に、33団体が署名した書簡も、同様の持続可能性基準の強化と輸入木質バイオマスの支援見直しを求めています。

<今回の経産省の方針転換に関するコメント>

  • 地球・人間環境フォーラム 企画調査部 森林・木質バイオマス問題担当 飯沼佐代子

「輸入木質バイオマス発電の新規認定停止は歓迎、しかし既存案件に見直しが求められる」

「新規認定の停止は、これまで環境団体が要請してきたことであり一定の評価はできます。しかし、今後新規認定は既に見込まれておらず、現場への影響はありません。建設中を含め100件を超える既存の大型バイオマス発電所は、今後最長20年間稼働を続け、輸入木質バイオマス燃料も増加が続くと予想されます。これは、石炭火力を超えるCO2排出が2045年まで継続し、北米や東南アジアの森林が日本の再エネの燃料として伐採し続けられ、生産地のペレット工場の周辺住民が大気汚染や水質汚濁に苦しみ続けるということです。

バイオマス発電によるCO2排出量や海外の森林環境・社会への影響をより正確に把握し、情報公開を徹底すれば、輸入木質バイオマス発電がFIT/FIPの支援対象として不適格であることは明らかです。既存の輸入木質バイオマス発電所も含めて、FIT/FIP賦課金による支援を停止すべき時だと考えます。」

  • ウータン・森と生活を考える会 事務局長 石崎雄一郎

「当会が活動するインドネシアは、その場所にしか生息しない希少種など生物多様性の宝庫です。また、先住民の文化なども残っています。木質バイオマス生産のために開発が進み、自然環境や人権が損なわれることを強く懸念します。」

  •  バイオマス産業社会ネットワーク 理事長 泊みゆき

熱利用のないバイオマス発電は、排出削減効果、経済性、持続可能性の観点から気候変動対策として不適格だということが明らかになっています。EUや韓国はバイオマス発電への政策を転換しましたが、日本も特に問題の多い輸入バイオマスによるバイオマス発電からは、できるだけ早く撤退すべきだと考えます。」

本件に関するお問い合わせ先

地球・人間環境フォーラム 担当:飯沼、鈴嶋 event[a]gef.or.jp