Environmental Report Awards 2001
第5回 環境レポート大賞
受 賞 作 品 一 覧
作品名をクリックすると講評を見ることができます
環境報告書部門
■大賞(環境大臣賞) 1点
■優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞) 12点
■奨励賞 2点
環境行動計画部門
■大賞(環境大臣賞) 1点
■優秀賞(全国環境保全推進連合会会長賞) 3点
第5回環境レポート大賞表彰式・環境報告書シンポジウム開催のご案内
第5回環境レポート大賞 講評 (五十音順)
[環境報告書部門]
大賞(環境大臣賞)
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日産自動車株式会社 「日産自動車株式会社 2001年3月期 環境報告書」
日産自動車の理念と取組について、写真、グラフ等を多用し、よりわかりやすくまとめている。特に、企業活動及びクルマが環境へ及ぼす影響について、図を用いてわかりやすく記載されており、その認識に基づいて、ライフサイクル全体での環境負荷低減に向けての責任と対応も示されている。また、全社的に環境マネジメントシステムが構築されていることはもとより、主要工場におけるその運用や監査の状況についても紹介されている。
また、環境パフォーマンスの個々の項目についても、ライフサイクルの段階毎にわかりやすく記載され、同時に自動車以外の事業の情報も充実している。さらに、個別事業所毎のPRTR情報等についても積極的に公表し、そのデータ等も絶対値で示すとともにグラフ化するなど全体的に充実してきており、改善の跡がうかがえる。
さらに、環境報告書への記載内容が、1998年度分から一覧的にまとめられており、環境省の環境報告書ガイドラインやGRIのガイドラインとの項目比較を行い、年度毎の改善状況が一目でわかるように工夫されている。こういった取組など、環境報告書の新しい方向性にもチャレンジしていこうとする努力は高く評価される。
優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞)
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イオン株式会社 「イオン環境報告書2001」
巻頭に2000年度の目標及び実績を一覧表にした上、巻末に2001年度環境目標を一覧にして開示し、継続的実践を重視していることがよく分かる。環境会計の開示についても詳細で分かりやすい。また、環境保全に配慮した独自ブランド(PB)商品の開発・展開、それらPB商品の容器包装、安全性など、商品への配慮も記載されており、様々な取組が紹介されていることは評価できるが、定性的記述が多い。
廃棄物削減及び店頭リサイクルに関するデータの開示は詳細でしかも分かりやすい。社会とのパートナーシップとして様々な取組、例えば、環境学習支援などの記載もよい。社外環境監査員の意見も開示されており、報告書の信頼性を高める努力がうかがえる。
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株式会社岡村製作所 「2001環境報告書 GREEN WAVE 21リポート」
全体として、企業活動が環境に与える負荷を削減し、循環型社会の構築へ向けて積極的に取り組んでいることがわかる。その認識に基づいて、環境マネジメントシステムの構築、環境パフォーマンスの向上に努めていることが伺える。環境マネジメントシステムについては、組織体制・時間的流れなどが明確で、トップレビューを行うなど、内部でのチェックアンドレビューの機能をわかりやすく記載している。
環境パフォーマンスについても、全体像を図を用いてわかりやすく説明しており、2000年の達成状況、2001年の目標も図表で明示されている。データ等については絶対量を表示してあり、サイト毎のデータも一覧表で整理されている。本報告書の範囲も、極めて明確に記載されている。マテリアルフローについては課題を認識しており、チャレンジ姿勢がうかがえる。なお、昨年のアンケート結果のフィードバックがあれば、更により良いものになると思われる。
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キリンビール株式会社 「キリンビール環境報告書2001年版」
環境報告書を発行して8冊目となり、完成度も増し、環境に取り組む姿勢がうかがえる作品として高く評価された。
事業概要から環境方針、目標、取組などがわかりやすく、コンパクトにまとめられている。環境マネジメントシステムや、環境パフォーマンスについても項目ごとに図解をいれるなどわかりやすく表現している。例えば、環境負荷の抑制の概況についてはユニークな収支図もつけ、工程別に排出を捉えている。
また、温室効果ガス抑制についての取組や、飲料という本業に深く係わる水への取組などについの記載も豊富である。データについても実数値だけでなく、グラフ化するなど理解し易いよう工夫が凝らされている。豊富なサイト情報は巻末の資料編にまとめるなど、コミュニケーションツールとして洗練されたものと言えるものであり、環境報告書の新しい方向性に取り組んでいるチャレンジ精神は高く評価される。
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株式会社西友 「西友 環境活動報告書2001」
流通業の報告書としてわかり易く完成度の高い作品として評価された。
環境負荷の低減と市場競争力の優位性の合致について認識を示しており、全体的な取組につながっている。中期行動計画(グリーンビジョン2005)では、取組の基本方針と数値目標を掲げており、チャレンジ精神がうかがえる。
事業活動と環境影響については、店舗開発にも言及し、わかり易い事業段階別のデータつきのマテリアルフロー図を掲載している。環境会計では詳細データとともに、算定方法やガイドラインが掲載されている点が評価される。環境コミュニケーションについても環境学習、消費者懇談会など地域との様々な交流の取組について記載されている。
また、資料編の充実した記載など報告書作成者の熱意と努力が感じられる。
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積水化学工業株式会社 「環境レポート2001」
緒言から後に続く実績報告まで連続性に配慮していてわかりやすい。
環境マネジメントシステムについては、目標設定、結果、次の目標が明示され、また、環境監査の結果や教育訓練実績についても具体的に報告されており、継続的改善の仕組みが構築され、機能していることがわかる。環境負荷の事業分野別の売上高等のデータ、各事業分野の責任者のコミットメント等、豊富な情報がすっきりとまとめられ、事故、苦情の報告も比較的よく記載されている。
環境パフォーマンスも事業分野別に報告され、データについては基準、総量、原単位といった、活動成果を読み手が評価するために必要な情報が掲載され、評価・分析も比較的よく記載されている。環境配慮製品開発の仕組みと実績数値が示されている点は高く評価される。
なお、環境保全活動のマトリックスによる事業活動の流れとの対応はわかりやすいものの、事業活動全体の負荷量、重要度についてはわかりにくい。また、サイト毎のPRTR情報についての記載がなく、今後の工夫に期待したい。
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ソニー株式会社 「ソニー環境報告書2001」
大規模で多岐にわたってグローバルに事業を展開している企業が環境方針を徹底させ、その状況を報告するには様々な努力と工夫が必要である。その意味で本作品は、環境ビジョンの達成に向けて環境効率評価やカンパニー評価、環境行動計画の定量的評価指標を紹介するなど、環境経営とその徹底に関する有益な情報を開示し、海外を含めた報告書の第三者検証と所見などをわかりやすく記載していることが評価される。環境報告書の革新的改良努力が読み取れる。
これだけの巨大企業グループが全体での投入物量を概算ではあるものの、把握し始めていることは評価される。コストをいかにあげないで、稀少金属なども含め物質毎の正確な把握をし、それについての削減計画に結びつくことを期待したい。また、限られた誌面から、結果として環境負荷の総覧や遵法状況が分かりにくくなった点や、豊富なパフォーマンス情報記載についてさらなる工夫を期待したい。
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株式会社竹中工務店 「竹中eレポート2001」
建設業と環境のかかわりを分かりやすく解説しており、コンパクトにまとめた作品として評価された。また、自社の環境に係わるマテリアルフローについても全体像がよくわかるように示されている。全体としての環境マネジメントの仕組み、体制はもちろんのこと、建設廃棄物についての取組、リサイクルの取組、技術開発などについても、しっかりと書かれている。さらに、ダイジェスト版もわかりやすい。
建設業は下請け等が多い業種であり、今後は、それについての記述やトラブルなどマイナス情報の記述が望まれる。また、グリーン購入についても記載してあるが、もっと詳しく、例えば、全体に占める割合や金額等の記述があれば更に良い。建築物等は使用時の環境負荷の方が多いので、施主に対する働きかけについて、内容や推進方針、実績等についての記述、トリプルボトムラインに係る情報も期待したい。
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タバイエスペック株式会社 「ESPEC環境マネジメントレポート2001」
環境省の環境報告書ガイドラインに忠実に沿ってまとめ上げた労作である。形式的に準拠したのではなく、その狙いをよく理解して正攻法で取り組んだという点で高く評価される。従業員1000人弱の中堅企業であるが、取組項目、データ把握はグローバルな大企業以上といっても過言ではない。例えば、総物質投入量の把握などは食品会社以外にはまだほとんどできていない状況の中、製品や事業の懇切な紹介をしている点や、ガイドラインへの対応状況といったデータの記載はコミュニケーションツールとしての工夫として高く評価された。
報告書の普及が望まれている現下の状況で、この様なアプローチはこれから報告書を作成し、コミュニケーションに努めようと考えている企業にとって、大いに参考となるものと言える。
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中部電力株式会社 「2001年版地球環境年報〜地球を考える エネルギーを考える〜」
平成6年より8度目の発行となり、完成度の高い報告書として評価された。環境宣言21を軸にそれを実現していく仕組みをわかりやすく示しており、読者に大きなインパクトを感じとらせるものとなっている。記載された数値データ、インプット、アウトプットのまとめは見やすく工夫され、かつ実数値とグラフ化表示などで比較可能性、検証可能性を高めている。環境会計もコストおよび効果の測定・集計の面で非常に見やすく、良くまとまっている。取組については定性的な記述が多いので、今後、数値化した目的目標の記載が望まれる。
「U社内外の評価」は、コミュニケーションツールとしての信頼性を高めるものとして高く評価される。それだけにそこで指摘された読者ニーズや世間での懸念、例えば、原発の廃炉コストを含めた経済性や、予想される東海大地震への緊急対策等についての記述も今後は期待したい。
「V資料」については、全体として自社のデータが少ないので、サイト毎のデータの記載などその充実を期待したい。
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凸版印刷株式会社 「TOPPAN 環境報告書2001」
業界における自社の役割および当年度の活動成果に対する評価が、担当役員により具体的・明確に述べられている点が評価される。
各事業分野別に生産に伴う環境影響が具体的に説明され、各分野の事業所について詳細な基礎情報が提供され、読み手の理解の助けになるよう生産工程図が示されており、わかりやすい。実績値については、総量・原単位・評価分析・実績値の算定基礎がよく書かれている活動があり評価される反面、記載の少ない活動については今後の工夫を期待したい。
また、環境会計やパフォーマンスデータについての対象範囲が一覧で明示されている点も評価されるが、環境報告書や環境会計等の対象範囲の整合や各事業の規模、各事業と子会社等との関係についての記載が充実すれば更によい。さらに、環境配慮製品開発の仕組みの記載については、製品数にとどまらず、生産活動全体に対する割合もわかるような実績値の報告も期待したい。
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日本電気株式会社 「NEC環境アニュアルレポート2001」
NPOとの共同作業による環境報告書作成という独自の取組を行っていることがコミュニケーションという観点で評価され、このことにより、非常に優れた作品となっている。例えば、目標と実績、それに対する評価を一覧表にまとめた上で、個々の取組についての説明を示しているなど、わかりやすいのは読み手の目が入っているからと言えよう。また、よいデータであっても全体に占める割合を示すなど誤解させない工夫なども良い。
データについては、サイト別データも含め、マスバランスをきちんと示すとともに、ライフサイクル別のCO2排出量について前年・当年の値を示すなど、環境負荷の全体像が充実している。
グローバル企業であり情報量も膨大になってしまうが、WEBを上手く活用し、関連情報を参照しやすくしている点もよい。また、問合せ先マーク、WEBマークを設け、項目ごとに参照情報に導くための工夫をしていることなど、コミュニケーションツールとしての工夫として評価される。
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リコーユニテクノ株式会社 「リコーユニテクノ株式会社 環境報告書2001」
環境負荷の項目毎に、具体的な取組内容がわかり易く説明され、それに続いてデータが実績値とグラフ化で詳細に記載されている。環境報告書は情報開示のみにとどまらず環境改善へのツールとも位置づけられるが、CO2の排出量削減への取組などは、活動とその効果が示されておりわかりやすい。
「社員の環境教育」、「環境改善活動」の表彰等も人物の写真が入り、環境について社員のモチベーションを高めるものとなろう。また、事業場として最も重要な地域とのコミュニケーションについても、地域活動へ積極的に参加する等、巻末の「環境保全報告書」にある住民クレーム等への対応記録と合わせて評価できる。独立の企業ではあるが、サイトレポートの参考となりうる作品である。
奨励賞
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清水印刷紙工株式会社 「環境報告書2001」
従業員26名の小規模企業の環境報告書である。パッケージングでの環境対応型商品の開発の重要性を認識し、取り組むとともに、環境マネジメントシステムを立ち上げ、それに組み込んでいる。目的、目標もきちんと立てられ、実績把握もされており機能していることがわかる。
はがき大の用紙16頁でコンパクトにまとめており、印刷会社として当然かもしれないが、ユニークな工夫を凝らした作品である。中小企業でISO14001の認証取得をした企業が環境報告書を作ろうとする際に参考となるものである。
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中村留精密工業株式会社 「環境報告書2001」
従業員400名強の中堅企業が初めて発行した環境報告書である。環境マネジメントシステム、環境パフォーマンス、環境会計についてもまんべんなく述べられている。パフォーマンスについては実数値がきちんと押さえられ、目標、実績とも記述されている点で評価される。また、マテリアルフローについても総投入量まで把握しており、削減対応策も記述しており高く評価される。
今後は、環境教育についての記述も望まれるし、この規模の企業であれば従業員の顔が見える環境報告書だと親しみが持て、さらには環境保全活動のモチベーションにつながるものと思われる。
[環境行動計画部門]
大賞(環境大臣賞)
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いしかわ動物園 「いしかわ動物園 平成13年度 環境行動計画」
動物園という特色ある組織であるが、自然との関わり、共存を図っていくにはどうしたらよいか、十分認識し、組織目的をうまく活用しつつ様々な環境保全への取組を行い、それを随所に記載している。組織としてのエネルギーや資源の節約についての取組、データの把握もきちんと行われている。
また、来園者が様々な体験を通して、楽しく学習できる環境教育プログラムを開発、実施しているなど、環境にやさしい動物園(「エコ動物園」)への取組が高く評価された。
優秀賞(全国環境保全推進連合会会長賞)
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株式会社アカサカテック 「株式会社アカサカテック 環境行動計画」
少人数の情報通信サービス業として考えられるすべての側面についてよくまとめられている。今後の取組や役割分担なども明確でありわかりやすい。グリーン購入の進展に伴い、取引先などに提示することも増えると思われるため、コミュニケーションツールとしての工夫を行い、同業他社へ見本が示されることを期待する。
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佐藤組株式会社 「平成13年度環境行動計画書〜命ある地球を守る〜」
土木建築業として25名の事業場ながらよく環境マネジメントの計画遂行のための点検が行われている。二酸化炭素と産業廃棄物については環境負荷の低減目標を掲げ、それに対する具体的な取組内容も明確に記述している。業務上必要なことで当然とはいえ、法規制の遵守についても把握記載され、また行動計画の評価とそれに基づく見直しに対する取組についても明らかにしている。
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太閤山観光株式会社 「環境行動計画書(平成13年度)」
肥料・農薬の使用量の削減、芝刈りの堆肥化利用についてよく記述されている。同社は、前回の優秀賞受賞企業だが、グラフ、図表を多用するなど、コミュニケーションツールとしての工夫など前年度作品よりも全般的に向上が見られる。環境教育等についての実績や役割分担などについての記載、また、自社だけでなく関係する企業などとの共同取組の成果を期待したい。
第5回環境レポート大賞募集要項
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