砂漠化の現状〜アジアでは

 地球規模土壌劣化評価会議(GLASOD)によると、過去45年間のうち、土地劣化の影響を受けている世界19億haの土地のうち、最大の面積である5億5,000万haはアジア太平洋地域に存在します。また、アジア地域内の人口の39%に当たる13億2,000万人が干ばつと砂漠化の影響を受けやすい地域に居住しています。原因は農業活動、薪炭材採取や伐採などの森林減少及び過放牧、産業開発などが挙げられます。

 南アジア、東南アジアの砂漠化の詳細な分析は、United Nations Environment Programme(UNEP,国連環境計画)が「世界砂漠化地図 World Atlas Desertification 1997」で述べています。それによると

 南・東南アジア土壌劣化評価(ASSOD1997)によると、乾燥地域の劣化により農業生産が相当量減少していることが明らかになっている。 中国では1億8000万ha(中国の草原の9割を含む)で土壌劣化が見られ、これは中国全体の乾燥、半乾燥、乾燥半湿潤地域の56%を占めている。また、インドでは1億1000haが、パキスタンでは6200万haが劣化しており、それぞれの国の乾燥、半乾燥、乾燥半湿潤地域の57%、86%を占めている。

 多くの国々で土壌劣化による農業生産への悪影響が見られる。  インドでは国土の27%が土地劣化の被害を受けており、特にヒマラヤ地域で水食により地表層の養分に富む土壌が流出している。

 イランでは農用地の45%が水食に影響を受けている。  風食も深刻であり、インドとパキスタン、特に中央イランからタール砂漠に伸びる乾燥地帯、及び中国の7500万ha影響を受けている。 また、灌漑農業の結果として塩害も多く発生しており、世界の乾燥、半乾燥、乾燥・半湿潤地域の人間活動による塩害被害地の75%がアジア地域に分布している。1980年代の半ばにおいては、パキスタン、インド、中国だけで世界の塩害の被害にあっている農地の半分(3000万ha)を占めている。パキスタンでは土壌中の塩分の上昇により収穫が30%減少した(WRI1997)。

 農薬や化学肥料の過度の使用も土壌を劣化させる要因となっている。 また、ダムや鉱山開発、都市化、産業もアジア地域の土壌劣化に寄与している。

 例えば中国では、鉱山開発により200万haがすでに劣化し、4万haが影響を受けつづけている。 核兵器の実験、軍隊の活動の結果出された有害廃棄物による土壌への影響も南太平洋諸国の関心事だ。

 西アジアでは、ほとんどの土地が砂漠化しているか、砂漠化しやすい状況であるが、砂漠化している土地の割合はシリアの10%からバーレーン、クウェート、カタール、アラブ首長国連邦の100%近い数字まで異なる。

 ヨルダン、イラク、シリア、アラビア半島の国々では、放牧地の広い範囲で砂漠化が見られる。レバノンでは山岳の急斜面で土地劣化が深刻で、ブータン、イラク、ヨルダン、オマーン、シリア、アラブ首長国連邦では塩害の被害をこうむっている。

 UNEPによると西アジアにおける土地劣化の主要因は以下の通りである。

・過放牧
・薪炭材の過剰採取
  −ヨルダン、イラク、シリアの3600万haは上記2つが原因で土壌劣化している
・風食:1億1000万ha
  −湾岸諸国、イラン、シリア
・水食
  −サウジアラビア、レバノン、シリア、イラク ヨルダンの山岳地帯では、年間の土壌流出は200トン/ha。
   シリアでも同程度と言われている(CAMRE/UNEP/ACSAD1996))

・灌漑の失敗による塩害、アルカリ分、養分消失
  −バーレーンの33.6%、ヨルダンの3.5%、クウェートの85.5%、シリアの5.9%で灌漑による塩害が発生
・都市化による周辺農地の消失 ・農用地の生産性の減少による農民の農地放棄及び都市への流入
  −シリアの土壌劣化の被害額は農業生産高の12%、GNPの2.5%にのぼると言われている。(シリア環境省1997)

UNEP's approach to the control of LAND DEGRADATION AND DESERTIFICATION, UNEP,1999,pp25-29
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