2005年1月20日

環境コミュニケーションシンポジウム開催

第8回環境コミュニケーション大賞表彰式と同時開催

1月20日、当フォーラムは、サステナビリティ・コミュニケーション・ネットワーク(NSC)などと、東京・日本青年館大ホールで「環境コミュニケーションシンポジウム〜多様化する環境コミュニケーション」を開催しました。これは、優れた環境報告書やテレビ環境CMを表彰する「環境コミュニケーション大賞」の表彰式にあわせて開かれたもので、企業関係者など約700人が来場しました。
 「環境コミュニケーション大賞」は、企業等による環境情報の開示と環境コミュニケーションへの取り組みを促進しようというねらいのもと、1997年から毎年開かれています。8回を迎えた今回から表彰対象にテレビ環境コマーシャルも加え、名称も「環境レポート大賞」から変更になりました。この間に環境報告書の発行企業数が増えるのにあわせてコミュニケーション大賞への応募も質・量ともに年々充実しています。そして最近の傾向としては、環境に限らず人権や労働などの社会的側面を盛り込んだ報告書が増えていることもあげられ、昨年からは持続可能性報告が環境報告とは独立して表彰されるようになっています。

写真:山本良一審査委員長の講評

多様化する環境コミュニケーション

 環境報告書を作成・発行している(今後発行の企業も含めて)企業などの数は900社にのぼり、環境コミュニケーションは年々多様化しています。業態や業務内容に応じて、また情報を伝える相手に応じて、コミュニケーションすべき内容やその方法を変える重要性が認識されてきています。
 そこで今回のシンポジウムでは、「多様化する環境コミュニケーション」をテーマに基調講演とパネルディスカッションが行われました。
 まず森島昭夫さん(地球環境戦略研究機関理事長)が、「企業の社会的責任と環境コミュニケーション」と題した基調講演で、社会的責任が強く求められる企業が今後、多様になる情報開示にどう対応していくべきか、その背景や方向性を解説しました。
 続いて行われたパネルディスカッションでは、「ひろがりはじめたステークホルダーダイアログ〜どう生かし、どう広げるか」をテーマに、ステークホルダーダイアログの有効な活用方法と普及に向けた課題について、環境コミュニケーションに関わる企業、NGO、学識経験者、行政のパネリストの間で意見交換が行われました。
 環境コミュニケーションの担い手である企業の立場からイトーヨーカ堂とJR東日本のステークホルダーダイアログに関する取り組みについて発表がなされました。イトーヨーカ堂コーポレートコミュニケーション部の幅野則幸さんは、同社の社是にはもともとお客様、取引先、株主、地域社会、社員に信頼される誠実な企業を目指すというCSR的な考え方が盛り込まれていることを紹介しました。さらに、「お客様」とのコミュニケーションの場である店頭を活用した小売業ならではの対話の取り組みが披露されました。また、JR東日本経営管理部の宮城利久さんは、2004年に開催した第1回ステークホルダー・ダイアログの経験から、意見を聞くだけでなく、企業自らがステークホルダーに向けて提案する姿勢も必要なことを強調しました。
 環境省経済課長の鎌形浩史さんは、ステークホルダー間のギャップを埋めるための環境を整え、企業によるコミュニケーションの取り組みをバックアップするような施策を行っていきたいと行政の役割をまとめました。
 また、中部リサイクル運動市民の会代表理事の萩原喜之さんは、NGOとして企業のステークホルダー会議に参加した経験から、「企業と地域の仲間の信頼の醸成」に役立っている具体例を紹介しました。
 一方、電通CSR室の安川良介さんは、企業の環境情報が受け取られるメディアとしてテレビなどの広告が有効だという調査結果を紹介し、「環境の問題の改善には行動が欠かせない。『1人の100歩より100万人の1歩』を実現するのにテレビの強みが利用できるのではないか」と話しました。
 さらに、立教大学の高岡美佳さんは、企業による環境・CSR情報のコミュニケーションがうまくいかない理由として、ステークホルダーの要求とギャップを埋めるためには、伝えるべき内容と伝える手段・手法について検討を重ねる必要があることを指摘しました。


ステークホルダーダイアログの課題とこれから

 企業側からは「コミュニケーションは誰のため、何のためにするのかというところを問われている」(宮城さん)という問題意識や「消費者が動く社会づくりに貢献する双方向コミュニケーションのあるべき姿を模索していかなくてはならない」(幅野さん)という今後の環境コミュニケーションへの意気込みが示されました。
 一方、企業への注文として、萩原さんは「消費者が当事者意識を持てるように情報を伝えてほしい」と指摘しました。安川さんもまた、商品の環境配慮だけでなく環境改善の効果をつけた商品の方がよく売れたという調査結果を披露した上で、情報の出し方に工夫が必要なことを訴えました。さらに、高岡さんは環境に関心を持っていない人びとをどう巻き込むかという点に企業の努力が求められるとコメントしました。
 最後に、コーディネーターの後藤敏彦さん(NSC代表幹事)は、ステークホルダーダイアログを広め、より良いコミュニケーションを実現するためには、先進事例を広めることやダイアログを進めるファシリテーターの養成などを課題としてあげました。
 当フォーラムでは、今回紹介した環境コミュニケーション大賞以外にもNSCへの支援などを通じて、企業などによる環境コミュニケーションの普及に取り組んでいきます。(報告者:坂本有希)

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関連情報:
環境コミュニケーション大賞の受賞作品
NSC(サステナビリティ・コミュニケーション・ネットワーク)