世界銀行業務マニュアル

OP 4.01

 

これらの政策は世界銀行職員が使用するために作成されたもので、必ずしも主題の完全な扱いとは限らない。

 

 

環境アセスメント

 

 

記:OPBP、およびGP 4.01は連帯して、OMS 2.36「世界銀行業務の環境的側面」、OD 4.00付則A「環境アセスメント」、OD 4.00付則B「ダムおよび貯水池に関する案件のための環境政策」、OD 4.01「環境アセスメント」、および次に挙げる業務覚書、すなわち「環境アセスメント:被影響集団・関連地域のNGOと借入人が行う協議の取扱いに関する世界銀行職員への指示」(4//10/90)、「環境アセスメント:環境アセスメントの理事への公開に関する世界銀行職員への指示」(11/21/90)、および「環境アセスメントの理事への公開」(2/20/91)、に置き換わる。この声明に関連する追加情報は、「環境アセスメントソースブック」(Washington, D.C.: 世界銀行発行 1991)、環境セクター評議会より順次入手可能となるソースブック最新情報、および「汚染防止・削減ハンドブック」に記載されている。環境関連の世界銀行声明文書には、他にもOP/BP/GP 4.02「環境行動計画」、GP 4.03「農業害虫管理」、OP/BP/GP 4.04「自然生息地」、OP 4.07「水資源管理」、OP 4.11「世界銀行融資案件における文化遺産の保護」(近日発表)、OP/BP 4.12「強制移住」(近日発表)、OP/GP 4.36「山林管理」、OP/BP 10.04「投資業務の経済評価」、およびOP 4.20「先住民族」が挙げられる。本OPおよびBPは、案件情報書類(PID)が初めて199131日以降に発行される全ての案件に、適用される。問い合わせは環境セクター評議会議長によって受け付けられる。

 

 

  1. 世界銀行は、世界銀行による融資を希望して提出された案件が、環境面において安全で持続可能であることを保証し、それによって、案件に対してより適切な意思決定を行うために、案件の環境アセスメント(EA)を義務づける。
  2.  

  3. EAとは、その分析の範囲、綿密さ、種類が、提出案件の性質、規模、そして案件が環境へ与え得る影響に依って決定されるような手続である。EAは案件の影響範囲内における潜在的な環境リスクと環境への影響を評価し、案件代替案を検討し、案件の選択・位置設定・計画・設計・実行を改善する方法を、環境に与える悪影響を予防、最小化、緩和もしくは補償しつつ好影響を高めることによって、見出し、案件実行全般を通して環境への悪影響を緩和および管理する手順を明示する。世界銀行は、実行可能な範囲で、緩和策又は補償策よりも、予防策を奨励する。
  4.  

  5. EAは自然環境(大気、水、陸地)、人類の健康と安全、社会的関心(強制移住、先住民族、文化遺産)および越境または地球規模環境問題を考慮の対象とする。EAは自然および社会的関心を統合的に考える。EAはまた、国家環境調査の所見、全国環境行動計画、国家の全体的な政策枠組み、国家の法規、環境および社会的関心事に対する制度面からの対応能力、関連国際条約・協定の下での案件活動に関連する国家の義務等の条件が、それぞれの案件および国家により異なることを考慮する。EAにおいて、案件活動がその様な国家の義務と対立すると判断された場合、世界銀行は、その案件への融資を行わない。EAは、案件処理の出来るだけ早い段階から開始され、提案案件の経済的、財政的、制度的、社会的、および技術的分析との密接な調和が図られる。
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  7. EAは借入人が責任を持って実施する。カテゴリーA案件について、借入人は、EA実行のために、案件に無関係の独立したEA専門家を雇用する。カテゴリーA案件の中でも特にリスクが高い案件、論議を呼ぶ案件、又は環境に関する懸念が深刻で多方面に渡る案件の場合、借入人は通常、国際的に認められ、独立した環境専門家に諮問委員を依頼し、EAに関係する当該案件の全側面について、助言を受けるべきである。諮問委員の役割は、世界銀行が案件を考慮し始めた時点での、案件準備の進捗状況、並びにすでに行われたあらゆるEA作業の質と対象範囲に依る。
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  9. 世界銀行は、自身のEA要件について、借入人を指導する。世界銀行は、EAの所見と勧告を見直し、それらが世界銀行の融資ヘ向けて案件の手続きを進めるのに適切な基盤を提供しているかどうか判断する。世界銀行が案件に関与する以前にEAが借入人によって完遂または部分的に遂行されていた場合、世界銀行は、EAを見直しそれが本政策と一貫していることを確認する。世界銀行は、公開協議や情報公開をはじめとするEA作業の追加を、適宜要求することがある。
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  11. 『汚染防止・削減ハンドブック』には、汚染の予防・削減策、および世界銀行が一般的に許容できる排出水準が、記載されている。しかしEAは、借入国の法令、並びにその地方特有の条件を考慮した上で、その案件のための排出水準や汚染防止・緩和対策への代替案を勧告してもよい。特定の案件又は現場のために選定された排出水準や対策案についての正当性は、EA報告書の中に完全かつ詳細に明示されなければならない。

  12. EA文書

  13. 世界銀行のEA要件を満たすために用いられる文書は、案件に応じて、環境影響評価(EIA)、地域的EA、セクターEA、環境監査、有害性またはリスクアセスメント、および環境管理計画(EMP)がある。EAには、これらの中から1つ以上の文書が、またはそれらの要素が、必要に応じて用いられる。案件の影響が、おそらくセクター的または地域的な広がりを持つ場合は、セクターEAまたは地域的EAが必要である。
  14.  

    環境審査

     

  15. 世界銀行は、各提出案件について環境審査を実施し、その案件に適切なEAの種類、並びに範囲を定める。案件は、その種別、位置、微妙さ、および案件が環境へ与えうる影響の性質・程度によって、4つのカテゴリーに分類される。

 

  1. カテゴリーA:案件が環境に著しく悪影響を与え、その影響が微妙であったり、多岐にわたっていたり、先例が示されていないと考えられる場合、その案件は、カテゴリーAに分類される。影響は、物理的に作業が行われる施設または現場よりも広範囲に及ぶ可能性がある。カテゴリーA案件のEAは、案件が環境に与え得る好・悪両影響を調査し、それらを有効代替案(「案件を実施しない場合」を含む)が与えうる影響と比較し、悪影響を回避、最小化、緩和、もしくは補償し、案件の環境に対する性能を向上するために必要とされるあらゆる方策を勧告する。カテゴリーA案件に関する報告書は、借入人が責任を持って作成する。報告書は一般的に「環境影響評価報告書(EIA)」(もしくは、適切に包括された地域的EAまたはセクターEA)の形式をとり、必要に応じて、そこへ第7パラグラフで挙げた他文書の要素が組み込まれる。
  2. カテゴリーB:案件が人類または環境面から重要とされる地域―湿地、森林、牧草地および他の自然生息地を含む―へ与え得る悪影響が、カテゴリーA案件より小さいと考えられる場合、その案件は、カテゴリーBに分類される。影響は、現場に特定されたもので、不可逆であると認められるものはほとんどなく、またほとんどの場合において、緩和策がカテゴリーA案件の場合に比べてたやすく考案される。カテゴリーB案件のEAの範囲は、案件によって差異があるものの、カテゴリーA案件のEAより狭い。カテゴリーB案件のEAは、カテゴリーA EAと同様、案件が環境へ与えうる好・悪両影響を調査し、悪影響を回避、最小化、緩和、または補償し、環境に対する性能を向上させるために必要なあらゆる方策を勧告する。カテゴリーB EAの調査結果は、案件書類(「案件審査書類(PAD)」および「案件情報書類(PID)」)に記述される。
  3. カテゴリーC:案件の環境への悪影響が最小限もしくは全く存在しないと考えられる場合、その案件は、カテゴリーCに分類される。カテゴリーC案件については、環境審査以上のEA行動は必要とされない。
  4. カテゴリーFI:案件への世界銀行による融資が、金融仲介者を通してサブプロジェクトに対して行われ、そのサブプロジェクトが環境に悪影響を及ぼす可能性がある場合、その案件は、カテゴリーFIに分類される。

 


特殊案件に関する
EA

 

セクター投資貸付

 

 

  1. セクター投資貸付金(SILs)については、各提出サブプロジェクトの準備期間中に、案件調整団体または実施機関が、国家の規定および本政策の要件に従って、適切なEAを実行する。世界銀行は、調整団体または実施機関が(a)サブプロジェクトの審査、(bEA実行に必要な技術の調達、(c)各サブプロジェクトについてのEAの所見と結果の見直し、(d)緩和策(適切とされる場合はEMPも含む)実施の保証、および(e)案件実施中の環境条件のモニタリング、に必要な能力を持ち合わせているかどうか審査し、必要ならば、SILの項目に、そういった能力の強化を盛り込む。現状の能力がEA遂行に十分でない、と世界銀行によって判断された場合、全てのカテゴリーAサブプロジェクトおよび適当とされるカテゴリーBサブプロジェクト―全てのEA報告書を含む―は、世銀による優先的な見直しと承認の対象となる。
  2. セクター調整貸付

     

  3. セクター調整貸付金(SECALs)は、本政策の要件に従う。SECALに関するEAは、その貸付金の下で計画された政策や制度的・法規的行動が環境に与え得る影響を評価する。
  4. 金融仲介者貸付

     

  5. 金融仲介者(FI)業務について、世界銀行は「各FIが、提出サブプロジェクトの審査を行い、また副借入人による各サブプロジェクトの適切なEA実施を、保証しなければならない」と定めている。案件を承認する前に、FIは、サブプロジェクトが当該国家もしくは地方当局の環境要件を満たし、かつ本OP並びにその他関連する世界銀行の環境政策と一貫していることを(独自の職員、外部専門家、または既存の環境団体を通じて)確認する。
  6. 提出されたFI活動を審査する際、世界銀行は、国家の環境要件のうち案件に関係する事項の妥当性、およびサブプロジェクトのために提案されたEA協定を見直す。このとき、環境審査並びにEA結果報告に関する手順と責務も、見直しの対象に含まれる。必要な場合には、世界銀行は、案件がEA協定を強化するための項目を含むことを保証する。カテゴリーAサブプロジェクトを有すると見込まれるFI活動については、世界銀行の審査以前に、各関係FIは、そのサブプロジェクトEA作業のための制度機構を評価し(制度的能力の強化が必要な際は、その方策の確認も含む)、世界銀行へ文書で提出する。現状の制度的能力がEA遂行に十分でないと世界銀行によって判断された場合、全てのカテゴリーAサブプロジェクトおよび適当とされるカテゴリーBサブプロジェクト―EA報告書を含む―は、世銀による優先的な見直しと承認の対象となる。
  7.  

    緊急復興案件

     

  8. OP4.01が提示する政策は、通常OP8.50「緊急復興援助」の下で扱われる緊急復興案件に適用される。しかし、本政策の遵守が緊急復興案件の目的の効果的かつ時宜を得た達成の妨げになる場合は、世界銀行は、その案件を本政策が定める要件から免除することが出来る。そのような免除の正当性は、貸付書類に記録される。しかし、いかなる時も次の2点は最低限遂行されなければならない。その2点とは、(a)緊急復興案件準備の一環として、環境面で不適切な行為がどの程度非常事態を促進し、悪化させたか測定すること、(b)あらゆる必要修正案が緊急案件または将来における貸付業務の中に組み込まれること、である。
  9.  

    制度的能力

     

  10. 提出案件のEAに関連する重要な任務を遂行するために必要な法的または技術的能力(EA報告、環境モニタリング、検査、緩和策の管理等)を借入国が保持しない場合、案件は、そのような能力を強化するための項目を含む。
  11.  

    公開協議

     

  12. 国際復興開発銀行または国際開発協会による融資を希望して提出された全てのカテゴリーAおよびB案件について、EA処理中に、借入人は、案件が影響を及ぼす集団(以下、被影響集団)および地域のNGONGOs)に、案件の環境面に関する意見を聞き、それら集団・団体の見解を考慮する。借入人は、このような協議を出来るだけ早く開始する。カテゴリーA案件の場合、借入人は、これらの団体とa)環境審査の直後で、EA実施要領が最終決定される前、およびbEA報告書草稿が作成された時点、の少なくとも2回は協議する。さらに、案件実施期間を通じて、それら団体に影響を与えるようなEA関連事項の処理に関して、借入人は、必要に応じて団体と協議を行う。
  13.  

    情報公開

     

  14. 国際復興開発銀行または国際開発協会による融資を希望して提出された全てのカテゴリーAおよびB案件に関して、借入人と被影響集団・地域のNGOが行う協議を、有意義なものにするため、借入人は、協議の前に時宜を得て関連資料を提供する。資料は、協議に立ち合う集団・団体が理解および入手可能な形式・言語で、準備されている。
  15. カテゴリーA案件について、初回協議に向けて借入人は、提出案件の目的、説明および潜在的な影響についての概要を提供する。EA報告書草稿が準備された後の協議に向けては、EA結果の概要を提供する。さらに、カテゴリーA案件については、借入人はEA報告書草稿を被影響集団や地域のNGOが利用しやすい公共の場にて入手できる様にしておく。セクター投資貸付金(SILs)並びにFI活動については、借入人/FIが、カテゴリーAサブプロジェクトのEA報告書が被影響集団や地域のNGOが利用しやすい公共の場にて入手可能であることを保証する。
  16. 融資を求めるカテゴリーB案件の独立したEA報告書は、被影響集団および地域のNGOにとって入手可能である。国際復興開発銀行または国際開発協会による融資を希望するカテゴリーA案件、並びに国際開発協会の融資を求めるカテゴリーB案件については、そのEA報告書が、借入国内で公開されており、世界銀行に正式に受領されていることが、世界銀行による案件審査の必須条件である。
  17. 借入人がカテゴリーA EA報告書を世界銀行に正式に提出すると、その概要(英文)は各国理事に配布され、報告書はInfoShopを通じて入手可能となる。世界銀行が世界銀行InfoShopを通じてEA報告書を公開することに、借入人が反対した場合、世界銀行職員は以下のいずれかの行為をとる。a)国際開発協会案件に関しては、その案件処理手続を中断する。b)国際復興開発銀行案件に関しては、更なる処理に関する問題を各国理事に提出する。

  18. 実施

  19. 案件実施期間中、借入国は、(aEA報告書の結果に基づいて借入国と世界銀行が同意した方策が、案件書類の中に提示された環境管理計画(EMP)の実施も含めて、遵守されているか、(b)緩和策の状況、(c)モニタリング結果、を報告する。世界銀行による案件の環境面の管理は、法的同意書、EMP、または他の案件書類中に示された方策をはじめとするEAによる結果と勧告に基づいて行われる。