第9回 環境コミュニケーション大賞環境報告書部門受 賞 一 覧
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■環境報告大賞(環境大臣賞) 1点
■持続可能性報告大賞(環境大臣賞) 1点
■環境報告優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞) 10点
■持続可能性報告優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞) 6点
※環境報告マイスター賞受賞は、 ※「環境報告マイスター賞」とは、上記の大賞・優秀賞該当作のうち、過去通算3回以上大賞または優秀賞を受賞している事業者の応募作におくられる賞で、受賞通算回数を示して表彰されます。今回は、6点が受賞しました。 ■奨励賞 3点
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第9回環境コミュニケーション大賞 環境報告書部門 講評
◆沖縄電力株式会社「環境行動レポート2005」 環境活動に関する誠実な開示をしている。沖縄という地理をよく理解され適切に事業展開していることが紙面から読み取れる。また、他の電力会社が、原子力へのシフトをする中で、エネルギー事情、地理的・地形的な問題を考えて、将来的にどのような発電方法を推し進めるべきかのジレンマに果敢にチャレンジしていることも読み取れる。さらに、発展途上国のこれからの発電事業の持続可能な経営のために、沖縄電力で展開している自然環境と調和した電力事業の実例をも丁寧に掲載しているので、環境活動や地域貢献などのいい事例を海外に向けて紹介できるレポートではないだろうか。
◆株式会社大和証券グループ本社「大和証券グループ 持続可能性報告書2005」 委員会等設置会社への移行を反映してか、自らのCSRの考え方を明確にした上で、その実践の具体的結果と課題をコンパクトに報告している。本業を通じた「社会的課題の解決」という本来のCSRの姿が随所に見られ、多様なステークホルダーと従業員の顔が良く見える報告書となっている。特に、表紙で「赤ちゃんたちが成人する20年後の社会」を問うているのは注目に値する。ただし、方針、方向性が明確で「報告書」としては完成度が高まってきているが、本当のパフォーマンスはこれからである。報告書としての評価を維持するためには、今後は「実行」のレベルアップが必要であろう。
■環境報告優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞) ◆アサヒビール株式会社「アサヒビールグループ CSRレポート2005」 全グループ製造会社における2006年度までの環境中期計画と達成状況が定量的に示されている。また、環境問題の重み付けを行った上で、独自の環境負荷統合指標を開発し、環境パフォーマンスの推移を示している。こうした評価指標によって、企業全体の環境負荷低減の進捗状況が分かり易くなっている。個別の記載項目については、必要項目が網羅的かつコンパクトに開示されると共に、Web情報とのリンクが明確に示されており、読み手にとって使いやすい構成となっている。トレーサビリティの記述はあるが、食品産業としてもっと詳細なサプライ・チェーン・マネジメントについての記述や原料情報を期待したい。
◆株式会社NTTドコモ北海道「NTTドコモ北海道グループ 環境・社会報告書2005」 今回から環境面に加えて社会面の情報が報告され「環境・社会報告書」となったが、全体的にバランスのとれた誠実な環境経営への取り組みと報告内容が評価できる。情報量も豊富で、特に通信業における環境負荷(マテリアル・バランスやサプライチェーンを含む)を丁寧に取り上げ、その低減に努力している姿がよく理解できる。また、土壌・地下水・底質汚染状況の調査とその結果も載せていることは評価できる。社会的課題の解決について、本業での解決と社会貢献活動はもう少し明確に分けたほうがCSRについての世界的な認識と整合性がとれると考える。
◆王子製紙株式会社「王子製紙グループ 企業行動報告書2005」 天然資源を扱うという特性もあり、環境のサステナビリティの認識についてもよく説明されている。事業特性と自社の方向性を明確に示し、コミットメントからパフォーマンスまで、一貫性のある報告となっている点を高く評価した。また、一般に環境破壊と誤解されがちである木材利用や原料調達についても、誤解を解消すべくわかりやすい説明を工夫している。植林にあたっては生態系の保全に配慮していることは評価されるが、今後の植林拡大を考えると、更に一層の配慮と取り組みについての記述を期待したい。環境植林や海外での荒廃地での植林にあたり「生物多様性保全に配慮した施業指針」が適用されているのかが明確には記述されていないが、生物多様性回復に向けてもチャレンジを期待したい。
「環境先進企業」になることを公言し、目標達成のためのこれまでの取り組みや今後の具体策などを明確かつ分かりやすく説明している、筋の通った報告書である。さらに、特集として「温暖化」に焦点を当て、方針や防止策につき具体的な取り組みを開示することで、同社の環境に対するコミットメントの強さをより強調させている。環境会計についても、レイアウト等を駆使しながら具体的な効果やコストについて読者に分かりやすく説明しており、この点も評価できる。しかし、環境関連のリスクマネジメントの取り組みに関する記述はあるものの、ネガティブ情報は開示されていない。同情報が無い場合は、「無し」という形で公表されることが望ましい。また、監査体制についても、概要に関する記述はあるものの、監査結果や改善項目などの情報はない。更に、報告の対象範囲の拡大も望まれる。スーパー・グリーン・ファクトリの屋上に太陽光発電が設置されていないようにみえるが理由は何なのであろうか。
異なる業種の事業群について、独自に指標を設けるなど、環境パフォーマンスの把握に工夫が見られる。マネジメントの記載も豊富であり、ビジョン、目標管理、戦略、チェックとすべての工程に関する記載が充実しており網羅性も高い。社会性項目も他社に比べて具体的戦略や定量的なデータの記載が多い。ただし、相当量の木材を使用する住宅産業として森林認証の問題などサプライ・チェーン・マネジメントを通じた生態系保全の取り組みなどの記述がほしいところである。また、独自の構成ですこし読みにくい点もある。例えばリスク対応などは、環境関連(P.34)、労災(P.56)、地震、個人情報保護(P.64)とバラバラにせずに一箇所にまとめても良いのでは。また、各カンパニーごとの業務が少しみえにくい。そのほか、サイトデータの充足などが今後の課題である。
◆株式会社東芝 研究開発センター 環境報告書の作成にあたり、さまざまな外部者を参画させており、今回は学生(武蔵工大の8名)を起用しており、さまざまな知見を増したことと思われる。中学校のPTA関係者の確認も得るなどして、読み物としても、大変親しみやすいものに仕上がっている。サイトレポートとして重要なネガティブ情報も開示されている。しかしながら、素人の目線で環境活動の内容を紹介するというやり方はある面で新鮮であるが、このような(画期的な)編集コンセプトのためか、例えば内部監査や緊急時対応等の環境報告書ガイドライン記載推奨事項のいくつかが欠落しているので工夫を要する。
◆トヨタ自動車株式会社「Environmental & Social Report 2005」 グローバル企業として、それにふさわしいグローバルな視点からの報告となっている。連結対象も広く、その内容は質・量ともに年々精度を増している。環境に関しては、「トヨタ環境取組プラン」に基づく取り組みの報告が中心となっており、豊富なデータ・情報量にもかかわらず、わかりやすい構成となっている。また、2005年度で終了する第3次プランの進捗状況に加え、2006年度からスタートする第4次のプランの詳細が既に掲げてあり、将来を見通した確実な環境経営が伺える。しかし、今の経済社会システムの延長線上では地球環境の危機回避は難しく、2020年代初期までに対応策をとる必要性が言われている。その意味で、サステイナブル・モビリティについての記載は豊富ではあるが全般的には定性的な記述にとどまっている。今後は自動車産業のみならずグローバル企業の雄として、2030年に向けての具体的な方針や施策、指標等を用いた定量的な情報を期待したい。社会性については、ステークホルダー毎に方針と取り組みに関する記載がありわかりやすい。
◆富士写真フイルム株式会社「富士フイルムグループ 社会・環境レポート2005」 同社の製品を通じた、社会面、環境面のステークホルダーとのコミュニケーションが進んでいる。サステナビリティ会計、環境効率、設計段階からの化学物質対策などリスク低減、循環型社会形成に向けた取り組みとその記述が厚く記載されており、参考になる情報が多いものとなっている。また、専門性の高い内容についてステークホルダーとの対話の中でうまく表現していることで、読み手にとって理解しやすくなっている。ステークホルダーとして将来世代にまで目をむけており、サステナビリティについての認識の高さがうかがわれる。となれば、本業での貧困撲滅、生物多様性の保全等についての一段の取り組みを期待したい。
◆株式会社リコー 同社の報告書は、三分冊構成で幅広い内容を記載している。なかでも環境経営報告書は各ページにおいては活動内容を丁寧に記載しており、報告書としての完成度が高い。情報量が多く、外部のみならず企業内部にも十分に役立つ内容になっており、グローバルな展開に有効に活用されていることがうかがえる。CDMに積極的に取り組んでいることは高く評価できるが、コメットサークルでの貧困削減、生物多様性の保全等への取り組みの記述の充実も期待したい。森林生態系保全、植林活動などの社会貢献も充実しているが、本業での環境負荷とのトレード・オフの計算などを試みたら面白い。目的意識の向上に役立つと思われる。課題として、情報量がかなり多いため、すこし焦点が散漫な印象があるので、三分冊報告書の構成と編集にさらなる工夫が必要と思われる。
◆株式会社リコー 福井事業所「2005年度 リコー福井事業所 環境報告書」 製造サイト全体として熱心に環境活動に取り組んでいることが良く理解できる。物質収支もわかりやすく記載しており、ネガティブ情報の開示については、おそらくサイトレポートのみならず全環境報告書を含めてもトップクラスである。見開きのダイジェスト版もよくできている。更に近隣のみなさまとのコミュニケーションに関する情報量も豊富であるが、工場見学の要望に対して待ちの姿勢でなく、攻めの姿勢を期待したい。相互理解が更に深まることと思われる。しかし、EMS組織や内部監査等、環境報告書ガイドラインで記載が推奨されている事項の幾つかが記載されていないことは残念である。
■持続可能性報告優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞)
企業の社会的責任報告書として、各ステークホールダー毎に章立てを分け、それぞれ仕組みの説明、PDCAをまとめた表、担当役員の総括コメントを掲載した上で項目毎の詳細な内容を記述するという構成がとられており、現状と今後の方向性が理解しやすく、社会性項目の開示情報も比較的充実している。印刷版から除かれ、詳細版(ホームページで公開されるHTML)に掲載された情報のリストを添えた工夫も評価できる。サプライ・チェーン・マネジメントについての取り組みについても記述が多いが、総合的なCSR調達への一段のレベルアップとその情報を期待したい。
国内外の医療関係者、従業員などさまざまなステークホルダーと積極的に対話する姿勢が読みとれる。マネジメントと社会性の指標を3年度分開示し、比較可能性とわかりやすさを確保している点が高く評価できる。また、経済的付加価値分配の内訳を明示しており、透明性の高さを感じる。研究開発における倫理の記述はあるが、業種から考え更に充実し、数値情報化についても創意工夫をこらすことを期待したい。
同社の報告書の特色はコーポレートガバナンスの実践思想の中心に「企業は公器である」ことを掲げて展開していることにある。その上で、ビジネスの実行、環境の取り組みとパフォーマンスがあり、更に、社会的取組としての、ステークホルダー、従業員、社会との結びつきを明確にしており、かつ、報告内容の構成面も分かり易く、また必要事項は確実に記載されており、優れた内容になってる。グローバル企業として全世界の情報を記載していることは評価できるが、登場人物がほとんど日本人というのは一考を要しよう。CSR調達の方向性が明確に示されてきているので、早期の実現を期待したい。
環境報告書としては、全体的によくまとまっており、見やすさについても配慮されていて、高い水準にある。特に、次の点を高く評価した。まず、環境パフォーマンスの項では、事業特性を踏まえた環境負荷に言及した上で、取り組み内容、実績を丁寧に説明して、自社の活動についての評価を加え、それらを踏まえた今後の目標、実現策を明確に述べている。次に、小売業の重要な柱である、商品のパフォーマンスについても、かなりのページを充てており、かつ定量情報も、同業他社と比較すると充実している。サプライ・チェーン・マネジメントについての記述は豊富だが、米国流の倫理基準に加え、トレーサビリティなど日本の消費者の関心のある点についての記述の充実があるとよい。また、「グラスルーツ・サーベイ」については是非とも数値データを開示すべきである。なお、報告範囲については改善の余地がある。範囲には連結対象のすべては含まれていないようであり、その理由は明確には記載されていない。報告範囲が適切なのかどうかわかるような記載を心がけてほしい。
製品に対する環境配慮に関しては、グローバルに取り組んでいる事例などを織り交ぜた説明など同社の取り組みの充実度が把握しやすい内容で構成されている点は評価できる。また、ネガティブ情報に関しても、その後の対応まで明記されている点は優れている。しかし、マテリアルフローについては、全体像をある程度把握しているものの、内訳や同社内におけるフロー(開発、製造から物流等)までは詳細に説明されていない。製品が多岐にわたるので容易ではないであろうが、今後の改善が望まれる。企業に対しては、自然環境について「保護の支援」ではなく本業を通じての管理、保全が期待されているので、一段の創意工夫を期待したい。
◆日産自動車株式会社「サステナビリティレポート2005/環境報告書2005」 サステナビリティレポートは、アニュアル・レポートや環境報告書などとあわせて網羅的な情報開示を遂行しているものの中で最上位に位置づけられている。環境報告書は地球環境問題に対する企業姿勢が明確に伝わり、メッセージ性を持ったものとなっている。環境リスクへの対策状況やネガティブ情報、グリーン調達等の必要項目も網羅的に書かれている。しかし、一方で、定量的な情報は記述情報の中に散りばめられており、グラフ等を用いた説明が少ないために、環境パフォーマンスの推移が分かり難い。データ集やWebとの連携が課題である。
■奨励賞
◆大平興産株式会社「環境報告書2005 ENVIRONMENTAL REPORT」 廃棄物埋立処理業で小規模事業所という立場でありながらも、要求されている記載事項等を的確に掲載しており、かつ、全体を通してわかりやすい編集となっており、企業にとってマイナスとなる情報についても掲載している。また、自然環境に対する配慮についても大きく取り上げられている。廃棄物削減についての取り組みも記述されているが、受け入れ廃棄物の資源化についての記述がないので不可能なのか不明である。地域における交流の取り組みの情報が少ないことと、報告書に対するアンケートが付記されていない点については、今後改善すべき課題である。廃棄物の最終処分場は、悪臭や浸出水の水質汚濁が問題であり、また処分場閉鎖後の管理が重要であるが、将来の管理資金の積み増しなどの努力が誠意を感ずる。
◆大和情報サービス株式会社 湘南モールフィル「湘南モールフィル 環境レポート2005」 ショッピング・モールの環境報告書で、極めてユニークである。このような取り組みが、全国のモールに展開し、各テナントの環境取組が促進されることを期待したい。今話題になっているアスベストについても、コンパクトな情報が記載されている。なお、巻末の(各種環境)パフォーマンスデータ集の図表がやや分かりにくく、本文中のデータも含め経年変化は2003年と2004年のみの推移であり、更に環境報告書ガイドラインに基づく網羅性については課題が残るが、小規模事業者にもかかわらずユニークな取り組みにチャレンジしていることを高く評価したい。
◆豊田ケミカルエンジニアリング株式会社「環境報告書2005」 環境報告書として25頁の分量は決して多くはないが、内容がコンパクトにほぼ過不足なくまとめられている。特に産業廃棄物処理の中小企業(一社一サイト)として、社長以下全社一丸となった意気込みと取り組みの熱意が感じられ好感が持てる。産廃排出量が不明だが、フロントランナーとしてゼロエミッションにチャレンジしてもらいたい。独自の工夫による環境効率が環境経営指標として位置づけられ、どのようにすれば環境負荷をかけずに業績向上が図れるかを考える切り口になるとしている。また半田市の小学生を対象とする「環境教育基金」の設置も評価できる。今後、外部の評価視点やステークホルダーとの連携を心がけると、さらに良い環境報告書となることが期待できる。
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