第8回 環境コミュニケーション大賞テレビ環境CM部門受 賞 一 覧
CMタイトルをクリックすると講評を見ることができます ■大賞(環境大臣賞) 1点
■優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞) 3点
■奨励賞 6点
■大賞(環境大臣賞) ◆社団法人公共広告機構「消える砂の像」 人間社会の繁栄があたかも砂の像のごとく今崩れ去ろうとする事実を、誰もが経験したことのある海辺の砂遊びで象徴的に扱ったことで、逆に心象風景として今そこにある危機をまざまざと見せてくれている。こわもての環境地獄絵図よりも、はるかに嫌悪感にも似た恐怖感を見るものに与え、地球温暖化防止の必要性を見事に訴えている。さらに、このように作品の印象度の高さだけでなく、環境に関する意見広告として地球温暖化、海面上昇、人間社会の崩壊と、信頼度の高い環境情報をコンパクトに視聴者に伝えており、作品の完成度も極めて高いと評価した。
■優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞) 「環境CM」であってもCMである以上、まず視聴者の関心を引きつけなければ意味がないが、このCMは、本来目に見えないCO2を大きな透明風船によって視覚化したアイディアが目を引く。また、ゆったりとしたテンポと押さえ気味の社長と秘書の演技も味を出しており、CMとしてのポイントを押さえながら、ビジネス・メッセージである「IT、で、エコ」に上手く落とし込んでいる。 B to Bの環境ビジネスのCMであり一般消費者を直接のターゲットとしたものではないが、一般消費者も楽しませる仕上がりとなっている。
あのたけしが、「いいこと言っちゃたかな」という捨て台詞が、CMを見る者への最大の殺し文句。思わず茶の間の向こうでも「たまにはいいことしてみようか」と、視聴者の胸に環境対応がスーッと入ってくる。豊かさ・便利さが変わらないなら、たまには環境に良いことしてみようという、一人でもできる環境行動を促す良い作品。
部品をブロックという身近なおもちゃに例えることで、理屈っぽくなりがちな「リサイクル」を、楽しく、わかりやすく解説することに成功している。異なる色のブロックの中に落ちてしまった一つのブロックを心配そうに見つめる作業員、周囲に集まってくる仲間たち、そして、縄を伝ってたった一つのブロックを取りにいく主人公。この一連のショットを通じて、「リサイクル」は一人一人の誠実な気持ちのうえに成り立っている、ということが視聴者に強く伝わる。
■奨励賞 鳥の群が飛行機の群に置きかわる瞬間には、驚きがともなう。その一瞬のために、あえてCMの前半部分をおさえめにつくる手法は秀逸である。また、環境へのメッセージ性が高く、鳥が自由に空を飛んでいられる社会がこのままずっと続くとは限らない、という「気づき」をもたらしてくれるCMである。
◆仙台市 環境局「仙台市100万人のごみ減量大作戦 「紙も,ワケて,リサイクル」篇」 CMづくりには大金が掛かるものだが、その難問をアイデアで乗り越え、少予算のCMとしては抜群の効果をあげただろう作品。ワケル君という駄洒落キャラをストレートに主役にしたポスターを、森の木に貼って撮影するという手法は、近所にロケ地のあるところなら、実に費用対効果のいいアイデアである。 「紙も、ワケて、リサイクル」というこのシリーズは、モチーフになったポスターや、新聞広告など、立体的なメディア使用で、効果をさらに高めているとのこと。ゴミの分別はそろそろ常識になってもいい時期なのだが、こうして呼び掛け続けないと、なかなか習慣化できない。こうした地道な努力が必要な分野である。
天然記念物である尾瀬の約7割の土地を所有している東京電力が、40年間にわたり、20kmにわたる木道を整備するなど尾瀬の自然保護につとめてきたことは、これまで一般にはあまり知られていない。昭和30年代、尾瀬ブームで荒廃したあやめ平の湿原をモノクロ写真で印象づけるなどドキュメンタリータッチで深々と表現したことが、東京電力の環境CM「TEPCOのECO」シリーズの中でも説得力の高いものとなった。
「長崎の鐘」、「長崎の女」、「長崎のザボン売り」、「長崎物語」、「長崎は今日も雨だった」など、ご当地ソングの本場「長崎」を逆手に取った、長崎市の遊び心溢れる環境CM。容器包装プラスチックごみの分別収集がはじまることを市民に知らせるために、テレビというメディアの特性を生かしている。 情報量が多いため、一度見ただけで全てを理解することは難しいかもしれないが、一度見たら忘れられない。自治体の環境広報には地味で目立たないものが多い中、この企画にOKを出した長崎市環境部に拍手を送りたい。
◆松下電器産業株式会社「Nのエコ計画 ななめドラム洗濯乾燥機「水の奇跡」篇」 ななめドラム洗濯乾燥機が、いかに節水機能が高いかということを、水槽を傾けた中で生き生きと泳ぎ回る金魚の映像で表現し、技術開発の成果をあまりにも分かりやすく映像化した見事さが、大きな説得力をもった。
ブラジルで「地球環境サミット」が開かれたのは1992年のことだったが、その前年から、ずーっと続けてきた、息の長いシリーズ。ほとんどのCMが「マンネリ恐怖症」に陥って目新しさばかり追い掛けているのを横目に見ながら、「自然は大きなホスピタル」というスローガン兼コンセプトを悠々とスローライフ的に追求した、いわば循環型社会対応型シリーズである。どの作品も粒が揃っていて、評価に優劣をつけにくいことと、長く続けたことこそが素晴らしいということの2点から、シリーズCMとして贈賞することにした。 こうした「自然の営み」を撮った写真は、撮影対象も撮影チームも限られてくるので、似たような印象になりやすいが、シリーズ化すると、いわば「先願権」を主張できるようになる。「息長く」は、他に真似のできない特長づくりにもなるのだ。 |