Environmental Report Awards 2000
第4回 環境レポート大賞
受 賞 作 品 一 覧
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環境報告書部門
■大賞(環境庁長官賞) 1点
■優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞) 8点
■奨励賞 5点
環境行動計画部門
■大賞(環境庁長官賞) 1点
■優秀賞(全国環境保全推進連合会会長賞) 2点
第4回環境レポート大賞 講評 (五十音順)
[環境報告書部門]
大賞(環境庁長官賞)
◆松下電器産業株式会社 「松下電器グループ2000年度環境報告書」
松下電器の理念と取り組みを、わかりやすく伝えるということと、必要な情報を網羅するということの、二つの点をうまくまとめ、極めて質の高い報告書となっている。
わかりやすさの点では、全体的に字数を減らして図表や写真を多用し、一般読者に読みやすい表現にしている。また、松下という大きな企業グループの環境活動をコンパクトにまとめ、詳細情報をインターネットのホームページに譲ることにより、報告書自体を簡潔にするという編集をしており、今後、多くの情報を公開していく場合の方法の1つとなろう。また、1999年度のハイライトでは、企業グループにおける活動成果が見開き2ページにまとめられ一目で理解できるようになっている。さらに、「VISION AND STRATEGY」等のページを設け、松下電器としての社会的な公約を明確に明らかにしており、その企業姿勢は高く評価できる。
必要な情報を網羅している点としては、化学物質管理についての情報公開が進んでいることが評価でき、また、グリーン調達が本格化していることが読み取れ、産業界全体に対する大きな影響力を発揮している。その他、物流部門のモーダルシフトや、製品の長期使用のための修理活動、製品に係る環境情報の開示等、重要な項目についての記述が追加・改善されている。
優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞)
◆キリンビール株式会社 「2000年版キリンビール環境報告書」
報告内容として、基礎的項目をはじめ、マネジメント、パフォーマンスに関する内容も網羅性があり、特に生産工程におけるライフサイクル全体の記述や、目標・行動計画・実績・中期的目標等についてグループ会社を含めて一覧表とするなど、全体を理解する上でわかりやすい。実績については、環境指標を掲げ、取組の結果を可能な限り定量化しており、算出根拠等を明記するなど充実した記載内容となっている。全体として、取組項目毎に見開きの頁でまとめたり、工場等の詳細なデータは資料編とするなど、簡潔にまとめられている。また、容器包装やグリーン調達に関する基本方針、広告・宣伝の基準に関する倫理基準を策定するなど、重要な課題についての取組姿勢が評価できる。その他、昨年度の第三者意見に対する回答や、環境報告書の読者アンケートで寄せられた内容の記載など、コミュニケーション努力の記述も評価できる。
◆株式会社西友 「西友環境活動報告 2000」
流通他社に比べ、報告内容を理解するための基礎項目、環境マネジメントシステムに関わる内容、環境パフォーマンスに関わる内容、その他の事項(環境会計、グリーン調達等)がまんべんなく記載されている。報告書本体は一般消費者にも理解しやすいよう平易な記述や視覚的デザインを工夫する一方、詳細なデータを資料編として別途まとめ、データを求める読者のニーズにも対応している。環境会計では環境配慮商品の内訳も出すなど工夫がみられる。消費者アンケート調査結果を紹介したり、お客様係に寄せられた声を苦情も含めて開示している点も評価できる。
◆ソニー栃木株式会社 「2000年度環境レポート」
サイト報告書の中で関心度が高い情報は、廃棄物や排水水質などの環境パフォーマンス情報である。このような基本を明確に認識して、簡潔に情報を公開している点で評価される作品である。冒頭の経営トップの挨拶では、サイト報告書の場合は報告の要約に終始する例が多い中にあって、経営意思を明確に表明している。
環境パフォーマンス情報については目的・目標(自主管理値)と実績を比較する形で開示し、少ない紙面に写真やカラーを多用するなど、一目で活動内容を理解できる工夫がなされている。
環境監査や経営者の見直しについて、制度的説明に終わらせずに、結果についても率直に報告していて、報告書の信頼性を高めていると言えよう。
◆東京ガス株式会社 「東京ガス環境報告書2000」
ガス事業のライフサイクル全体の流れに沿って環境対策を整理し、各事業の側面とそれに関連する環境問題が把握しやすい工夫がされている。「環境側面からみる事業活動」は、東京ガスの事業活動が及ぼす環境負荷をまとめていてわかりやすい。ガスの生産、供給、使用の各局面における事業の内容と関連の環境側面が詳細に述べられている。環境コミュニケーションについての多彩な取組も豊富に記述されており評価できる。
なお、国内の事業活動に焦点があたりがちだが、天然ガスの輸入元への言及があることも評価される。技術の解説や用語集、関連URLの紹介なども、ガス事業と環境問題への理解をすすめる一助となる。
◆トヨタ自動車株式会社 「環境報告書2000」
報告書に盛り込むべき基礎的項目、環境マネジメントシステム、ライフサイクル全体に沿った環境パフォーマンス情報が網羅的に記載されているだけでなく、その内容についても、製品に関する詳細な記述はもとより、一般的に情報量の少ない調達や物流、販売等に関する実績も詳述されており、データ・計算根拠等、内容的にみても大変充実している。特に、化学物質については、各工場・事業所別のPRTRデータを詳細に記載しており、各地域住民対象の説明会の開催とあわせて大変評価できる。
また、過去のデータを含む主要環境データの要約を記載するなど見せ方の工夫も見られる。21世紀に向けて、取組の対象範囲を連結決算の対象となる国内外の子会社とするなど、取組の広がりも評価できる。
◆日本電気株式会社 「NEC環境アニュアルレポート2000」
環境マネジメントシステム、および監査・継続的改善についての説明がきちんとされており、方針、実績、目標等の整合性も図られている。ライフサイクル全体にわたって把握している。環境パフォーマンス情報についても、省エネ・省資源、リサイクル、化学物質管理、製品設計の環境配慮等明確に記述されている。環境会計、グリーン購入等の取組もしっかり記述されており、取組の深さが推察できる。NPOとの連携で「ユーザーニーズとの適合性」に配慮している点は高く評価できる。その他、読みやすさなどの工夫及びサイト・レポートも評価できる。
◆株式会社日立製作所 「環境報告書2000 日立グループ」
報告書は、各項目ごとに環境目標とその活動成果が、図表を利用して簡潔に記述されており、読み手にとって分かり易く、かつ全体としてコンパクトにまとめられている。環境パフォーマンスをグリーンポイント制という独自の評価指標を導入して、自社の環境目標と比較して達成度の表現を工夫している点は良い。レーダーチャートを使用して表すことで分かり易く表示している。開発製品の環境適合設計について、環境負荷に対するLCA解析や評価も詳細に検討され、かつ製品の具体例を挙げて記載されており、よく理解できる。
◆株式会社リコー 「リコーグループ環境報告書2000」
写真や図表を多用するとともに表現もやさしく、読者の理解を容易にしている。環境行動計画と進捗状況が表にまとめられ、全社的な活動実績が一目で理解できる。また、エコバランスによる環境負荷分析でも、開発製品の具体例によるLCAを利用した分析により、製品のライフサイクル全体にわたる環境負荷についても図表を使用してわかりやすく記述している。環境会計においても、エコレシオ(環境負荷利益率)という指標を独自に設定し、環境負荷の面からの経済効率を表現する工夫が見られる。環境に関する教育とコミュニケーションについての記述も充実している。
奨励賞
◆仙台市 「リーディングエコプランせんだい(仙台市環境率先行動計画)の平成11年度実績に係る環境報告書」
環境率先行動計画(消費者、事業者としての環境行動計画)を策定している地方自治体は多いが、具体的な取組については発展途上のところが多い。そうした状況の中で具体的に取り組み、かつ、その実績を詳細に取りまとめている先進的な自治体である。詳細なデータと、その取組状況と評価を適切にまとめた報告書と、市民向けの極めてわかりやすい概要版の2種類を作成している点も、成果を市民や事業者に普及していこうという意図が見え、評価できる。また、数多い市の全ての組織、サイトのデータや取組を網羅している点も評価できる。今後、このような取組と実績の公表が、地方自治体に普及していくことを期待したい。
◆株式会社東芝 研究開発センター 「東芝 研究開発センター 環境サステナビリティ報告書2000」
コンセプト「環境サステナビリティ」を軸に、最先端の科学技術を研究開発する研究所としての環境報告を試みた点で努力が認められる作品である。
機密性が高い研究所にありながら、環境中への排出量や化学物質管理等の情報を開示しているだけでなく、研究開発の成果がその後に与える環境影響についての評価の重要性を認識し、研究テーマの環境影響評価システムなども紹介している。研究所における環境会計の試みとともにこの方面の環境マネジメントや情報公開に刺激となるところが大きい。
新規性が高いこれらの試みは結果の数値だけでなく、経緯が重要である。その意味でも先進的取組として評価できるものである。
◆株式会社ピックルスコーポレーション 「ピックルスコーポレーション環境報告書・2000」
中規模の食品製造・販売業者が、今年初めて制作した環境報告書であるが、内容が充実している上、読みやすく、親しみやすい点で、評価される。環境負荷の全体像の明示、農薬や堆肥についての取引先との協力の記載は、地球規模での環境負荷と、顧客の食品へのこだわりの両方に配慮する内容であり、好感がもたれる。
また、工場新設時のアセスメント、詳細なサイト情報は、地域住民への配慮を具体的に表現するものであり、熱意と工夫を感じられる。第三者意見、取引先からの一言にも、今回の報告書作成にあたっての積極的な姿勢が見られる。
◆安田火災海上保険株式会社 「環境・社会貢献レポート2000」
環境報告書作成への取組がまだまだ少ない金融・保険業界のなかにあって、さまざまな環境に関する取組を網羅的にわかりやすく公表しようとする努力が見られる。事業からの環境負荷の発生が少ない業態であるにもかかわらず、紙使用量、水使用量のみならず、エネルギー、廃棄物及びリサイクルについても物量データを経年変化も含め、わかりやすく説明している。本業商品としてのエコファンドについての取組の記述も評価できる。また、いち早く本社機構で取得したISO14001のエッセンスを全国の事業所に広げる取組についても紹介し、全社的な環境マネジメントシステムの構築への意欲を表明する一方、ゼロエミッション、グリーン購入など、今後取り組むべき課題についても明らかにしている。
◆山口日本電気株式会社 「NEC山口 環境報告書2000(NEC山口 かんきょう報告書2000年版小学校高学年むけ)」
一般の製造工場が学童向けに環境報告書を発行すること自体が、環境教育面で極めて意義あることである。作品は当然の事ながら、読者の理解能力を勘案し、ルビを振り、解説に多くの紙面を割いている。もうひとつの特徴は環境を守るための装置や工夫、活動のうち児童に興味がある具体的な内容を中心に紹介し、児童が読後、環境活動に取り組むに当たって参考となるような配慮が見られることである。環境方針をやさしく噛み砕いて説明する方法もあるが、抽象的に留まる恐れがあり、紙面を具体的な活動例や会社周辺の自然観察に割いており腐心の跡がみられる。なお、通常の環境報告書もサイト報告書として水準以上のレベルである。
[環境行動計画部門]
大賞(環境庁長官賞)
◆松林工業薬品株式会社 「環境行動計画書」
従業員65名の企業であるが、1999年12月にISO14001を取得しシステム的に環境に取り組んでいることがわかりやすく記述されている。データの記述が豊富な上、環境負荷削減目標としては、販売金額当たりの二酸化炭素や廃棄物の排出量の他に省エネやリサイクルについても定めている。化学薬品販売事業者であることから、ポリ容器のリユースや化学物質排出・移動量の把握とともに、緊急時の訓練など化学物質対策が徹底されている。
優秀賞(全国環境保全推進連合会会長賞)
◆梅林建設株式会社 「環境行動計画書 平成12年度」
企業理念、環境方針が明確かつ具体的である。また、協力(下請)会社にも環境保全の取組の輪を広げる努力をしている。行動計画の実施に当たっては、詳細な月別の計画推進表及び環境教育計画表を作成し計画の実効性の確保に努めている。
◆太閤山観光株式会社太閤山カントリークラブ 「環境行動計画書(平成12年度)」
環境方針が明確かつ具体的である。環境負荷の低減目標値としては、二酸化炭素及び廃棄物の排出量に加えて、上水道、殺菌剤及び肥料使用量についても年次毎に削減することとしている。とりわけ農薬の使用量の削減についてはコガネムシトラップの使用など様々な努力を図っている。