第10回 環境コミュニケーション大賞環境報告書部門受 賞 一 覧
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■環境報告大賞(環境大臣賞) 1点
■持続可能性報告大賞(環境大臣賞) 1点
■環境報告優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞) 7点
■持続可能性報告優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞) 6点
※環境報告マイスター賞受賞は、(株)西友<通算7回受賞>、ソニー(株)<通算7回受賞>、 (株)リコー<通算6回受賞>、松下電器産業(株)<通算6回受賞>。 ※「環境報告マイスター賞」とは、上記の大賞・優秀賞該当作のうち、過去通算3回以上大賞または優秀賞を受賞している事業者の応募作におくられる賞で、受賞通算回数を示して表彰されます。今回は、4点が受賞しました。 ■優秀賞(環境配慮促進法特定事業者賞) 5点
■奨励賞 2点
報告書タイトルをクリックすると講評を見ることができます 第10回環境コミュニケーション大賞 環境報告書部門 講評
◆株式会社リコー 「リコーグループサステナビリティレポート2006」 (環境経営報告書/社会的責任経営報告書/アニュアル・レポート) 明確なトップコミットメント(世界一の環境経営を目指して)の基に環境経営理念があり、バックキャスティングとグローバルな視点から、読み易くかつ印象的に報告されている。特にCO2の12%(国内)・10%(海外)削減目標や森林生態系保全への言及は評価できる。環境報告書としては現時点で最も包括的で完成されたものといえる。 社会責任経営報告書はCSRの基本的考え方が要領よく説明されていて、分かり易い。労働については数値で実績記載あるも、今後は具体的な目標設定が必要であろう。またグローバル活動、特にSCMの実績が分かりにくいので改善が必要である。なお、環境・社会・経済の3分冊化は報告量維持とトリプルボトムライン経営の視点からみて一つの工夫であり、そのこと自体は評価するが、整合性などに更なる工夫を期待したい。
◆サントリー株式会社 「サントリーCSRレポート2006/水と生きるSUNTORY 2006」 CSRレポートとしては、環境面の内容が充実しており、社会面と環境面のボリュームバランスがとれており、報告書のあり方としては、ひとつの模範事例となりうる。コーポレートメッセージである「水と生きる」というテーマによる記載の一貫性が報告書全体のメッセージ性を高めており、また、読みやすさ、理解しやすさにも功を奏している。 「水と生きる」別冊の作成、HPでのデータの充実など、コミュニケーションについての積極姿勢が読み取れる。 ただし、文中に記載の「グループ」の範囲が不明瞭で、企業規模を考慮すると、グループでの記載の更なる充実が課題として挙げられる。また、社会面で言えば、品質や取引先との関係などの部分で数量情報の充実、(業界としてのカルテルの防止等)公正取引についての記載の充実も期待される。食品関係では不祥事が頻発しているが、リーディングカンパニーとして安全性の確保に誰も追随できないような先端取組、ステークホルダーへの安心の提供、そのためにもトップのコミットメントと透明性の確保に邁進される事を期待したい。
◆味の素株式会社 「味の素グループ環境報告書2006/味の素グループCSRレポート2006」 CSRレポートとは別に環境報告書をweb版として作成しており、情報発信に対する姿勢がうかがえる。個別の取組についての記載内容は豊富で非常に優等生的な記載である。 「生物多様性とのかかわり」を環境での取組のトップにあげていること、食品会社として食料資源確保を特集に掲げるなど、グローバル企業としての先んじた認識を社会に示す姿勢も評価できる。レポートでの記載をきっかけによりいっそうの取組内容の充実を期待したい。 ただし、全体的には総花的で、コミュニケーションツールとして読者に何を訴えかけたいのか、メッセージ性に欠ける印象がある点は今後の課題である。また、経営者のメッセージも方向性のみで具体的なコミットメントとしての面が弱いとの印象を与えているのは惜しい。
環境経営報告書の名称にふさわしく、ビジョン、中期計画、年度目標、成果、課題が明示され、それらの関係性が理解しやすい形でまとめられている。環境マネジメントシステムも要点が整理されている。 取組内容、報告の重点は、広範な顧客に日常的に使用される商品(製品)を生産する企業としての特性がよく出ており、製品関係(研究開発、オフィスづくり、環境配慮型製品の提供、使用済み製品への対応、品質管理、長期使用への対応等)の記載が充実している。 報告書を読む上での前提である基礎的項目及び範囲、用語、根拠等は各所で概ね明示されており、見やすさも工夫されている。 パフォーマンスデータは単独、グループで併記され、さらに、その内訳として主要な工場、関係会社別のデータが提供されている。 しかしながら、自社の活動から一歩踏み込んでの、グローバルな視点での認識については、コミットメントに力強さが不足しているように感じる。また、使用済み製品への対応は報告されているが、サプライチェーンに関しての取組の記載は少なく、コミュニケーション、パートナーシップを含め充実が望まれる。
◆サラヤ株式会社 「環境レポート2006 Sustainability Report」 大手企業が全く認識もしていない時に、この規模の企業で、主原料であるパーム油の生産国であるマレーシアやインドネシアの環境問題に対して、事業規模を超えた深い理解を示した社会活動は特筆すべきものがあり、高く評価できる。国際団体であるRSPO(持続可能なパームオイルのための円卓会議)へいち早く入会するなど、原料調達にCSR調達の視点からの取組が充実しており、評価できる。 今後は原料生産国の環境保全への協力に留まらず、製品の生産から消費までライフサイクル全般にわたる環境配慮に取り組み、環境報告書に記載されていくことが望まれる。
◆全日本空輸株式会社 「ANAグループCSRレポート2006」 安心と信頼とを基本理念としたANAグループの企業活動が、良く理解できるレポートである。 また、環境への取組も航空機排ガスの削減とエネルギー削減のための省燃費型航空機への更新など企業努力が良く理解できる。コーポレート・ガバナンス、コンプライアンスへの取組、内部監査システムについても記述されており、リスクマネジメントについてもマイナス情報も含めて情報開示されている。環境関係の情報についても紙の使用や廃棄物発生の削減情報のみならず、PRTR法による化学物質の使用削減も含めて、包括的に記述されており、全体的に優れた報告書である。写真や図・グラフを多く使用することにより、読みやすい編集となっている。 今回は環境報告として評価されたが、持続可能性報告書としても秀逸なものとの評価である。今後の取組として、カーボーンオフセット寄付等々、世界で行われだしたさまざまな取組を率先して取り入れると同時に独自の斬新な工夫も期待したい。
webの利用により、環境情報に関してコンパクトな情報提供になっている。経済性の分析は、ステークホルダー別や環境会計など工夫が見られる。全般的にPlan、Do情報であり、Check、Act情報が少ない印象である。また、マイナス情報についてもきちんと載せるという姿勢があるとよい。 社会性に関する情報開示については、特に海外への技術移転や、ライフサイクルの川上であるエネルギー調達に関する記載は、他の同業者と比べて優れており、事業と社会の関わりが見える報告書である。
環境情報のうち、重要なテーマについては「社会・環境報告2006」本体で開示する一方、環境情報の網羅的開示のために環境データブックを発行しており、情報の優先順位を伝えつつ、多様な情報ニーズに応える工夫をしている。 世界の課題を認識し、これら課題解決に取り組むことをCSR活動の方向性としていることがわかる。多くの日本企業の環境取組がサイト中心の活動、製品、サービスにとどまっている事に比べ、一歩前進していることが理解できる。ただし、まだまだ取り組み始めたばかりで、世界の課題解決に社会・環境報告書で開示されている取組事例(現時点での取組)がダイレクトに結びついていないように感じられるので更なる工夫努力を期待したい。
資料編を含めた100ページ超の冊子と、重要な情報のみを集めた30数ページのダイジェスト版という2種類を作成し、異なる読者のニーズに対応しようとしている。ISO14001を取得している貴組織において、各部局共通で取り組む重点目標と、部局ごとの個別目標の2本立てで取組が行われている旨を説明した上で、共通目標は全体合計および組織単位ごとのデータを比較できる形で開示し、部局ごとの取組については、資料編で実績データや目標達成状況もきちんと開示するなど、多様な取組をわかりやすく示す工夫が見られる。 ただし、ISO14001と対象範囲の異なるグリーン購入、率先実行計画との関係の説明については、まだ工夫の余地がある。三重大学とそれぞれの環境報告書に対して意見交換を行うなど、興味深い取組も見られる。また、マイナス情報の開示も含め、更なる工夫も期待したい。
■持続可能性報告優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞)
◆株式会社INAX 「INAX Corporate Report 2006」 環境報告書、CSR報告書ではなく、Corporate Reportとして作成されているユニークな報告書である。「Corporate Report」と「Corporate Report Data」を分けて、「Corporate Report」はすっきりとさせて、企業経営の考え方を伝えることに重点を置いた構成・内容となっている。 「Corporate Report Data」はページ数23ページの中に集約されているため、情報量は少なくなっているが、構成はユニークである。静的ではなく動的といえる構成で、例えば、CSRマネジメント体制については、単独の項目に掲げての構成にはなっておらず、構成員の取組の項で、行動指針やツール、施策などが明示されている。データについて、特に従業員に関して、正社員のほか、嘱託・パート、派遣社員、協力会社請負社員数、就業時間、各種休暇制度取得状況が記載されており、他社に比して充実している点を高く評価した。 グローバル化を考えた中での社会的な課題への対応という面では改善の余地は大きい。また、マイナス情報について乏しい。「Corporate Report」を左開き、「Corporate Report Data」を右開きとした合本形式は連続性という点からは見づらかった。
◆株式会社西友 「西友 サステナビリティ・レポート2006」 CSR活動の柱である「商品」「従業員」「環境」「コミュニティ」「経済」の活動項目ごとに、取組・実績・今後の展開の3点について明確に記載されており、大変読みやすい構成となっている。 また、「食の安全」や「トレーサビリティ」が求められる業種において、安心できる商品を提供するための取組及び実績の開示は、同業他社と比較しても充実している。さらに、店舗の環境負荷は課税対象に、環境改善は控除対象として、店舗ごとに「税」を徴収する「ECO-TAX」の仕組みは、CO2削減を経済的に動機付ける上で、大変興味深い。長く続いているエコニコ学習も社会貢献というよりは本業としてのネットワーキングとして考えると素晴らしいものと思われ、それが伸びいているのもよい。
◆積水ハウス株式会社 「Sustainability Report 2006」 住宅建設事業者として考えうる様々なCSRに関する情報の把握、環境負荷の影響を考慮していて網羅性も高い。web版にはさらに詳細な情報が掲載されている。本編はチャートなどを用い一覧性も高く良くまとまっている。担当する従業員のほか、識者をはじめとしたステークホルダーのコメントを顔写真とともに掲載し、親しみの持てるレポート構成になっている。 方針と目的の整合性についても4つの価値と13の指針を定められ、マップ表示で分かりやすく整理されている。トピックに対してもそれぞれ4つの価値を示して展開している点が興味深い。マネジメントに関し、社会、環境とも目標と実績が良く整理されており、マテリアルバランスに関してもデータの算出方法を含めた記載がしっかりしている。 国内が中心なのでやむを得ないとはおもうが、調達はグローバルのはずなのでサプライチェーンに一層の配慮を期待したい。
コンパクトながら情報量も多く、うまくまとめられたよい報告書である。 環境負荷情報をソニーグループの全製品・サービスについて網羅的に把握している点や資源投入量を継続的に把握し、削減目標を定めて活動している点が、同業他社よりも優れていると評価できる。 また、持続可能性の観点ではお客様相談受付件数、労働災害や女性社員に関する社会性データをグローバルに把握し、地域別に開示している点が、グローバル企業の情報開示のあり方として高く評価できる。
◆大和証券グループ本社 「大和証券グループ 持続可能性報告書2006」 2005年度の実績・進捗状況、2006年度の課題・目標がそれぞれの取組ごとに明記され、PDCAを意識したCSRマネジメントを推進している姿勢がうかがえる。また従業員関連データの経年開示(2-3年間)や育児休職取得者、介護休職取得者の男女別開示など、積極的な開示姿勢が評価できる。 本業を活かした取組として「クールボンド」「SRI」「経済・金融教育」を特集し、金融がけん引するCSRをアピールするとともに、社員座談会やステークホルダーからのコメントが多数紹介され、コミュニケーションに取り組んでいることもわかる。金融教育については間接金融が中心の日本の中では大変意義あるものと思われるので、もっと明確に打ち出したらよい。 責任投資が地に着いたものとなっているのか、いまひとつ良く見えないのはPlan、Do中心でCheck、Act情報が少ないことと関連しているのかもしれない。環境についての取組がもう少しあってもよい。
◆富士フイルムホールディングス株式会社 「富士フイルムグループ 社会・環境レポート2006」 ステークホルダーとのコミュニケーションがよく取れており、外部の評価を受け入れて事業に反映しようとしている姿勢が良い。環境効率、サスティナビリティ会計など環境経営ツールを活用してアピールしており、環境経営への積極さがうかがえる。情報量が多すぎるきらいがあるが、内容が細部に渡って充実している。 AA1000基準に基づく評価結果と第三者保証の意味合いについての説明があるとよい。 一方、CSRの取組の行動計画や取組の成果、CSR調達、生物多様性への配慮などもう一歩踏み出した記載がほしい。
◆国立大学法人京都大学 「京都大学環境報告書2006 詳細版」 報告書は、84頁からなる詳細版の本体と、約100頁からなるデータ集により構成されており、その頁数及び内容から、報告書作成における熱意と努力、費やした労力が伺える。ただし、膨大すぎるのは編集努力が不足しているという批判にもつながりかねないので、次回以降の更なる工夫を期待したい。 特に環境負荷データについては、サイト毎の膨大なデータを収集・整理し、経年データとして取りまとめるとともに、一人当たりの使用量、排出量等に換算する等の工夫がされている。アスベスト対策や、排水の基準超過等に関する詳細な報告など、情報開示に対する真摯な姿勢が見受けられる。また、学内外の利害関係者からなるステークホルダー委員会を設置したことは高く評価できる。今後は、具体的な数値化された目標及び活動計画の策定、全組織的なマネジメント体制に基づく取組を期待する。
◆国立大学法人東北大学 「東北大学環境報告書 2005年度版」 全体を「総論」と「各論」の2部構成とし、内容も、図表等にまとめることにより、簡潔に記載されている。特に、環境方針から展開される、環境目標、環境活動計画について、数値目標も含めて、一覧表に取りまとめられており、他の大学に比べると総括的でより具体的な内容となっている。事業活動における環境負荷データについても、網羅的かつ経年的に把握されており、着実な取組が伺える。また、サプライチェーンマネジメントに関して、その考え方や具体的な依頼内容が記載されており評価できる。 ただし、環境マネジメントに関する記載内容に乏しく、特に各研究科等の部門におけるシステムが明確ではない。またガイドライン等との対応表あがればよりわかりやすいと考えられる。
◆国立大学法人新潟大学 「国立大学法人新潟大学 環境報告書2006 空へ舞え」 新潟の特徴であり、稀少生物保護の象徴であるトキを中心に据えた報告書の構成になっているため、読み手がトキを足がかりに大学の取組を理解できるよう報告書が工夫されている。報告内容においても、環境目標・実施計画については、実績、目標、計画を表で併記し、さらに目標を「重要項目」「準重要項目」として順位付けしたことは、大学の環境に対する取組の意気込みの高さが表れており、高く評価できる。 また、環境への取組について納入業者に話を伺った点は評価できるが、この話をそのまま掲載するだけではなく、サプライチェーンの取組として今後の大学の方針と合わせて具体的に記述して欲しかった。また、学生の参加がもっと見えるようにすることも期待したい。
環境マネジメントシステムの構築等、学内全体を上げて取り組んだ成果が報告書全体の記載から読み取ることができ、その実直さに好感が持てる。比較の信憑性、妥当性に疑義はあるものの、エネルギー使用量に「国立大学の平均値」を利用し、他大学との比較を試みたことに次回への可能性を感じた。また、第三者との意見交換会の開催内容をそのまま掲載させる事業者が多い中、意見交換会で指摘された内容とそれに対する回答を表にしたことは、読み手にとって大変わかりやすい。ただし、インプット・アウトプットの環境パフォーマンス指標をまとめられなかったのが残念である。
項目毎に写真や図を多く利用し、読み手にわかりやすい報告書になっている。特に研究所の事業内容や研究内容については、本文を読まなくてもグラフと写真を追うだけで報告書の粗筋が理解できる。廃棄物排出量やエネルギー投入量のサイト毎のデータも比較的豊富に盛り込まれており、環境への取組が組織全体で強いことが伺える。研究が社会にどのように役立っているのかが、もう少し見えるともっとよい。生物多様性についての取組や記述がもっとあっても良いと思うがあまり見えないのは残念。環境マネジメントに関する記述が少ないため、今後環境マネジメントのさらなる深度化に期待する。
◆大栄環境グループ 「CSR報告書 2006」 初めて発行するCSR報告書のため課題もあるが、大手廃棄物処理・リサイクル業者として、自社の環境CSR取組を報告書としてまとめ発行したことをまずは評価したい。「大栄環境グループの歴史」は読み応えがあり、その他の特集記事もたいへんわかりやすいが、グループとしている理由、全体像などが今一つ明確に見えてこないのは惜しい。複数サイトで個別にISO14001の認証を取得しているが、グループ共通の最上位の概念である環境方針が、やや抽象的なのが残念である。各センターの環境負荷データの開示は丁寧であるが、環境目標の策定・開示が各センター分を単に取り纏め併記している感もあり、トップダウン的にEMSのP(計画)が策定できないか検討いただきたい。 経営目標に関しては中期目標が記載されているが、環境目標もこれに連動して策定・記載されていればなお良い。
従業員33名の小規模産業廃棄物処理業者であるが、今回は5年目となる報告書発行である。処理センターでのライブカメラの設置や、過去5年間の苦情・事故情報の開示など、情報公開への姿勢は高く評価したい。環境学習支援としてNPO法人との連携、環境教育に関する国際シンポジウムの支援、そして報告書を海外にも発信できるよう英文併記としている等、環境コミュニケーションも先進的である。環境分野のみならず、大栄グループ・ビジネススクールを開設する等、社員の人材教育に対しても熱心に取り組んでいることが読み取れる。報告書としての網羅性もほぼ問題は無いが、可能な範囲で3〜5年の中期環境目的の設定と継続的な改善に向けた取組が期待される。
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