女性による自然保護運動
ガルワール地方は住民による自然保護運動発祥の地である。1974年に業者による大規模な森林伐採が進行していた。住民にとって森は生活の糧であったため、伐採を食い止めるために木の幹を抱え込み「木を伐りたいならわたしたちを切ってからにしなさい」という
チプコ運動(1)が山村の女性を中心に展開された(写真36)。その結果ウッタル・プラデシュ州政府は商業目的の伐採を制限し、傾斜角30度以上の斜面にある木の伐採を禁止することになった。チプコはヒンディー語で「抱きつけ」「掴まれ」を表す言葉である。
登山による自然破壊
ナンダ・デビは1949年から解放され、多くの登山者たちを惹きつけてきた。1982年には国立公園に指定されたが、翌年には閉鎖され現在にいたっている。スポーツ登山による自然破壊が最大の理由である。毎年4000人もの登山者が公園に入場していた。しかし、燃料のために木が切られたり、キャンプ跡にはゴミが残される結果になった。
困惑する地元住民
ナンダ・デビの入り口から最も近いラタ村(Lata)の住民はかつてナンダ・デビ登山のガイドやポーター役として働いていた。農閉期には貴重な現金収入だったが、登山が禁止された今、村の男たちは近隣の町へ出稼ぎに行かなければならない。公園には地元住民であっても立ち入ることはできない。
純粋な学術調査とエコツーリズムに限って、公園への立ち入りが認められている。
面積:630ku
主な動物:
ユキヒョウ(Panthera unica)、ヒマラヤグマ(Selenarctos thibetanus)、カモシカ(Capricornis)、ヒマラヤタール(Hemitragus jemlahicus)など。
参考文献:
IUCN (The World Conservation Union),
Paradise On Earth: The Natural World Heritage List A Journey through the World's Most Outstanding Natural Places, Patonga, 1995.
Jayal, N.D.,
Himalaya: Our Fragile Heritage, The Indian National Trust For Art and Cultural Heritage (INTACH), 1991.
Polunin, Oleg & Stainton, Adam,
Flowers of the Himalaya, Oxford University Press, Delhi, 1984.
Saith, Janjeev,
Garhwal and Kumaon, The Guidebook Company, Hong Kong, 1993.