写真53 コナラクの太陽神寺院。この建物は本殿であり、後ろにそびえていたシカラは失われてしまっている。高さ39mの前殿だけ残っているが、それだけでも十分大きく、見る者を圧倒させる。
天空を駆ける馬車
寺院の基壇(最下部)の壁には全部で12の車輪が彫刻されている(写真54)。正面階段両脇には7頭の馬の彫刻があり、現在は2頭が残っている。太陽神スーリヤは7頭の馬が牽く山車に乗り、天空を駆けめぐると伝えられている。コナラクの太陽神寺院はそれを寺院全体で表現したのだ。
建物の壁には神々、踊り子や楽隊、行進する兵士や交易の風景など社会の様子、化粧をしたり手鏡を覗く若い女性の姿などがいきいきと彫刻されている(写真55)。カジュラホと同様この寺院にもエロティックなポーズの像が見られる。
写真54 太陽神寺院の車輪彫刻。寺院の基壇にはこのような車輪が12彫られており、寺院全体で馬に牽かれる山車を表現している。
注(1)ジャガンナータ神:顔が大きく、手足がないヴィシュヌ神の化身である。主にオリッサ地方で信仰されている。
参考文献:
Behera, K.S., Konarak The Heritage of Mankind: Religion, History and Architecture, Aryan Books International, New Delhi, 1996.
Mitra, Debala, Konarak, Archaeological Survey of India, New Delhi, 1992.
写真56 オディッシーダンス。オリッサ地方ではオディッシーダンスが踊られる。現在では宗教的な意味合いは薄れ、純粋な舞踏として人々に受け入れられているが、その源流は写真55にあるような神に捧げる踊りである。
写真57 ブバネシュワールのムクテシュワル寺院(9世紀)。ブバネシュワールでは太陽神寺院原型になった寺院がいくつかある。この寺院では前方の拝殿と後方の聖室が完全に分離し、屋根は何層も石が重ねられ、高さがある。