1992年、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開かれた国連環境開発会議(UNCED)では、持続可能な開発(Sustainable Development)の最も重要な要素として、持続可能な森林管理の重要性が確認された。「森林原則声明」と「アジェンダ21」第11章では、温帯林や北方林を含むすべてのタイプの森林について持続可能な管理がなされることが必要とされている(「森林の持続可能な経営及び利用は、各国の開発政策と優先順位に従い、また、各国の環境上健全なガイドラインに基づいて行われるべきである」森林原則声明原則/要素8(d)、「すべてのタイプの森林の経営、保全及び持続可能な開発のための科学的に信頼できる基準及び指標を策定すること」アジェンダ21第11章)。
基準とは持続可能な森林管理の概念を規定したもので、指標はそれを測定する尺度、定量的・定性的に森林の特性あるいは状態を判定するための要素である。
熱帯林については1992年時点ですでに、ITTO(国際熱帯木材機関)によって基準・指標が作成されていたこともあり、森林原則声明とアジェンダ21の実施のためには温帯林及び北方林についての基準・指標の策定への取り組みが急務とされた。そこで、基準・指標の取り組みについては、温帯林の先進国を中心に以下のような森林タイプや気候が似ている地域ごとに進められている。
UNCEDに続いて、欧州安全協力会議(CSCE: Conference on Security and Cooperation in Europe)の支援のもと北方林及び温帯林の持続可能な開発に関する専門家国際会合が1993年9月、カナダ・モントリオールで開催された。この会合では、@温帯林等の持続可能な開発についての現状の把握と計測可能な基準及び指標の検討、A森林資源の広がり、生産力、健全性をモニターしていくための調査とデータ収集の必要性、Bこれらに関する将来の協力方法−など特に基準・指標の開発について討議が行われた。この会合をきっかけに、欧州の国々はヘルシンキプロセスとして同地域の温帯林の国々における基準・指標づくりに取り組んでいくことになる。
一方、欧州以外の国々は、カナダ政府のイニシアティブのもと、「温帯林等の保全と持続可能な経営のための基準・指標作業グループ」の第1回会合を1994年6月にスイス・ジュネーブにて開いた。このように始まったモントリオールプロセスには、1999年3月現在、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、チリ、中国、日本、韓国、メキシコ、ニュージーランド、ロシア連邦、米国、ウルグアイの12カ国が参加している。この12カ国に存在する森林は、世界の温帯林・北方林の90%、全森林の60%を占め、さらに世界の木材・木材製品の取引量の45%に相当する。
第1回目の作業グループ会合のあと、数回の会合を経て、1995年2月チリのサンチャゴで開催された第6回会合で、七つの基準と67の指標及びサンチャゴ宣言が合意された。七つの基準は以下のとおり。
基準1〜6は持続可能な森林経営の特徴について規定したものであり、森林の条件、機能や属性、森林から与えられる環境的・社会経済的なモノやサービスに関連する多面的な価値や便益に関係している。基準7は、各国の森林の保全と持続可能な経営を促すために必要な包括的な政策の枠組みに関するもので、基準1〜6で規定されている森林の条件、機能や属性を保全・維持または強化するような幅広い社会的な条件や過程を含んでいる。
これらの基準・指標は森林の状況と経営の国レベルの方向性を評価するためのツールで、持続可能性に向けた進捗状況を明らかにし、監視し、評価するための共通の(国レベルの)枠組みを示すもので、森林の経営単位における持続可能性を直接評価するためのものではない。モントリオールプロセスの基準・指標を適用することは、国レベルの森林政策づくりにおいて国際的に比較可能な情報を提供し、政策決定者だけでなく一般が利用可能な情報の質を向上させ、国内または国際レベルで森林政策に関する議論を活発化させることにつながると期待されている。
各国の自然・社会条件の違いから、これらの7つの基準と67の指標の適用とその監視には自ずから大きな差異が生じる。そこで各国はそれぞれの状況・条件に応じた測定スキームとデータ収集方法を開発する必要がある。指標の測定や報告についての各国のアプローチを互いに整合性を持たせるためにもなんらかの努力が必要である。
1995年にサンチアゴ宣言が出される後、モントリオールプロセス参加国は基準と指標を自国の森林に当てはめていく作業に取り組み始めた。1995年11月、ニュージーランド・オークランドにて第7回会合が、続いて1996年6月にオーストラリア・キャンベラで第8回会合が開催された。この二つの会合の間に、各基準のデータの入手可能性とその集約能力の各国の状況が連絡事務局によって以下のように報告されている。
データの有用性や報告能力における国による違いをうめるためには、新たな測定方法や報告方法が必要であることが認められ、「技術諮問委員会(TAC: Technical Advisory Committee)」が第8回会合で設立された。同委員会の役割は各会合で特定されるが、主に用語の定義やデータ収集・報告の実施面における技術的・専門的な分野で作業部会を支援することにある。
また、第8回会合ではモントリオールプロセスのこれまでの経過を解説した「進捗報告書(Progress Report)」と国別報告書をとりまとめた「第1次ドラフトレポート(First Approximation Report)」を策定することが合意された。「第1次ドラフトレポート」は、1997年10月にトルコ・アンタルヤで開かれた第11回世界森林会議で発表され、モントリオールプロセス以外の基準・指標策定への取り組みと情報を交換が行われた。なお、「進捗報告書」は1997年2月の国連持続可能な開発委員会に提出されている。
1997年7月に韓国・ソウルで開催された第9回会合の主な議題は第1次ドラフトレポートのレビューであった。ドラフトレポートのもととなった国別報告書ではそれぞれの指標について具体的な数値データが提出されたが、ドラフトレポートでは各国のデータ収集能力のみが記述され、指標データそのものは記述されていない。12カ国中、中国以外の11カ国が七つの基準について、9カ国が指標について報告している。データの比較可能性や透明性を図る上で、データの収集方法や測定方法について各国が情報を交換し合うことが重要だと指摘された。
基準 報告率(%) 情報収集率 詳細率 情報不足率 基準1 96 88 41 69 基準2 100 87 51 67 基準3 93 67 33 70 基準4 90 50 14 61 基準5 85 70 59 59 基準6 90 61 42 53 基準7 74 -- -- 25 すべての基準 87 68 39 50
注:基準7の「情報収集率」「詳細率」については、記述が定量的というよりは定性的であったので、データが集計されていない
資料: Working Group on Criteria and Indicators for the Conservation and Sustainable Management of Temperate and Boreal Forests, First Approximation Report of the Montreal Process, 1997年8月
1998年10月の第10回会合はロシア・モスクワで開かれ、各国で基準・指標の制度化とその実施面での機能的な支援づくり−例えば官民間、国レベルそして地方レベルにおける政府省庁間のパートナーシップ、データ収集と測定方法における革新的な技術の適用など−において意味のある前進がみられることが明らかになった。また、今後の取り組みとして、モスクワ会合の覚え書きには以下のことが挙げられている。
2000年報告書(仮タイトル)「モントリオールプロセス:温帯林等の保全と持続可能な経営のための基準・指標の実行における発展と新機軸(The Montreal Process: Progress and Innovation in Implementing Criteria and Indicators for the Conservation and Sustainable Management of Temperate and Boreal Forests)」の策定。2000年に開催される国連持続可能な開発委員会第8回会合及び第12回IUFRO会合(マレーシア、クアラルンプール)でモントリオールプロセスの成果を報告するため、能力開発、データ収集、制度的・規制的政策の開発、再植林、技術協力などにおける各国の成果に焦点を当て、これまでの基準・指標づくりにおける各国の経験を国別に記述し、収集データも掲載するものと予定されている。
指標データ報告書の発行。2003年を目標に各国から提出された指標に関するデータをとりまとめる。詳しい内容については1999年に予定されている第11回会合で決められる。
『将来のための森林〜モントリオールプロセスその基準と指標(Forests for the Future - Montreal Process Criteria and Indicators)』の発行。これはモントリオールプロセスを一般向けに紹介するパンフレットで、林地、木材生産、雇用などに関するデータが含まれる。同時に関連国際機関や金融機関に対して、モントリオールプロセス参加国への基準・指標実施のための支援を促すねらいもある。
「技術メモ(Technical Notes)」の発行。技術諮問委員会の報告に基づき、理論的根拠、用語定義、測定方法について記述したものを策定することとされている。測定方法についての最新の科学思考を反映して必要に応じてアップデートされる。
資料: AIDE MEMOIRE, Tenth Meeting of the Working Group on Criteria and Indicators for the Conservation and Sustainable Management of Temperate and Boreal Forests (Montreal Process), Moscow, Russian Federation6-9 October 1998また、次回の第11回会合での検討事項についてのTACが準備・検討するよう依頼されたのは以下の事項である。
フランスとフィンランドの主導で始まった欧州森林保護閣僚会合から生まれたヨーロッパ内の温帯林を対象とした基準・指標づくりの取り組みがヘルシンキプロセスと呼ばれているイニシアティブである。1999年3月現在、37カ国及び欧州委員会(EC)が締約国として参加している。
H1:欧州森林の持続可能な経営に関するガイドライン(2)ヘルシンキプロセス
欧州森林保護閣僚会合は3つの要素−すべての欧州の国々が欧州の森林の保護と持続可能な経営の分野で協力することの必要性、その他の国際機関等で議論・検討が進められている同じテーマとの一貫性、欧州以外の国々への波及効果−を背景に議論が続けられている。森林保護の持続可能な経営の開発と実施のための政治的メカニズムとしての重要な役割を担い、森林分野の国際協力、森林に関する研究・調査を促し、欧州内の国家森林政策への重要な影響を与えている。
1990年のフランス・ストラスブルク第1回会合では、閣僚レベルで世界で初めて森林保護の重要性が認識され、技術・科学的協力を進めていくことが約束された。合意された宣言に基づいて6つの決議についてのフォローアップが実施されることが決められた。
ヘルシンキプロセス第1回会合の決議
S1:森林生態系監視のための永久サンプルプロット欧州ネットワーク
UNCEDを受け、1993年の第2回欧州森林保護閣僚会議は欧州共通の森林政策の検討を行うことを目的にフィンランド・ヘルシンキで開かれた。ヘルシンキ会合では一般宣言とヘルシンキ決議が採択された。四つの決議は以下のとおりだが、この中でも持続可能な森林経営(H1)と生物多様性の保全(H2)について基準・指標の必要性が強調された。
S2:森林遺伝資源の保全
S3:森林火災欧州データ銀行の分散化
S4:山間森林経営を新しい環境状況への適応
S5:樹木生理学に関するEUROSILVAネットワークの拡大
S6:研究調査欧州ネットワークに森林生態系を持ち込む
ヘルシンキ決議
H2:欧州森林の生物多様性の保全に関するガイドライン
H3:市場経済移行国に対する林業協力
H4:気候変動に対する欧州森林の長期的戦略
H1に定められた「持続可能な森林経営」とは「現在及び将来にわたり相当の生態学的、経済的、社会的な機能を地域レベル、国家レベル、そして地球レベルでも果たしていくための生物多様性、生産力、更新能力、活力そして潜在能力を維持し、その他の生態系に対してダメージを与えないような方法、程度の森林及び林地の管理と利用」と定義されている。また、「生物多様性の保全」については「持続可能な森林経営に欠かせない実質的な要素であり、森林政策とその法規性において、他の森林に関する目標とあわせて考慮されるべきもの」とされている。
1994年3月ベルギー・ブラッセルで開かれた全欧州非公式円卓会合で合意された基準の核心部分(コアセット)は、専門家会合や科学的諮問グループなどからの提言なども受けた上で6つの基準と20の定量的な指標へと改訂された(1994年6月第1回専門家フォローアップ会合)。さらに1994年6月に定量的な指標は27に増やされ、翌年1月には政策手法の存在と実施を評価するために定性的な指標も暫定リストとして提示された。採択された基準・指標は科学的知見に基づき、技術的に実現可能で、費用効果の高いものと考えられていた。しかし、これらの6つの基準と27の指標は最終版であるとは考えられておらず、常に科学的知見や技術的経験の進歩にあわせて見直されるべきものだとされている。
表 ヘルシンキプロセスの基準
基準1 森林資源とそのカーボンシンクへの寄与の維持、適切な増進
概念の範囲:総体的な実行力
概念の範囲:土地利用及び森林区域
概念の範囲:蓄積
基準2:森林生態系の健全性の活力とその維持
基準3:森林の生産機能(木材及び非木材)の維持、増進
概念の範囲:木材生産
概念の範囲:非木材製品挨挨
基準4:森林生態系の生物多様性の維持・保全、適正な増進
概念の範囲:一般的条件
概念の範囲:代表的、希少かつ脆弱な森林生態系
概念の範囲:絶滅の危機にある種
概念の範囲:木材生産林の生物多様性
基準5:森林経営における保護機能の維持・適切な増進(特に、土壌と水)
概念の範囲:一般的な保護
概念の範囲:土壌浸食
概念の範囲:森林の水源かん養
基準6:その他の社会経済的機能と条件の維持
概念の範囲:森林分野の重要性
概念の範囲:レクリエーション・サービス
概念の範囲:雇用の供給
概念の範囲:研究及び専門的教育
概念の範囲:一般の関心
概念の範囲:一般の参加
概念の範囲:文化的価値
ヘルシンキプロセスにおいては、基準は「持続可能性を概念的なレベルでさまざまな側面からとらえたもの」であり、指標は基準に関連して測定可能な、または記述可能な数値とされている。また指標については、時間とともに変化する森林の特徴を測定した変化といった定量的なものか、定性的なものでも政策手法に取り入れるに十分信頼性のあるものに限られている。ただし、定量的な指標だけでは持続可能な経営を測りきれないことは認められているものの、慎重に検討するという姿勢が取られている。
1994年9月に実施された27の指標に関する44の質問項目からなる各国への調査の結果、データの入手可能性や定義の相違など、基準・指標づくりに共通して見られる問題・課題が明らかになった。これは指標自体の弱点というよりは、現存するデータ収集システムの適用が必要なこと、これまで十分にカバーされていない指標のデータ収集が開始されなければならないことが確認された。1996年5月のジュネーブ第3回専門家レベルフォローアップ会合では第2回欧州閣僚会合以降それまでの成果をとりまとめた進捗報告書を発行することが合意され、同年8月に作成された。
ヨーロッパでは、人間と森林の関わりの歴史が古いために、ほとんどの国がすでに持続可能な開発という概念のもとに国家森林政策を策定している。持続可能な森林経営についても、環境保護、生物多様性の保全とともに、ヘルシンキ決議H1、H2の精神と整合性のある取り組みをしている。ほとんどの参加国が基準・指標の開発と実行に取り組んでいるが、国によって持続可能な森林経営の変化を評価・測定する手法としての基準・指標の役割には違いがあり、基準・指標に応じた形での森林の現況に関する広範な情報についてまとめて発行している国は少ない。また、国レベルの基準・指標策定の国際的な動きにあわせて地方レベル、管理レベルの基準・指標づくりへの関心が高まっている。
1998年6月のリスボン第3回欧州森林保護閣僚会合では欧州における森林問題の重要テーマ「人間と森林の関係」が討議され、二つの決議−決議1「L1: People, Forests and Forestry: Enhance of Socio-Economic Aspects of Sustainable Forest Management」、決議2「L2: Pan-European Criteria and indicators and operational guidelines for sustainable forest management」−が採択された。決議L1は、持続可能な森林経営における社会・経済的な要素を強化し、地域開発、雇用、環境問題など社会全体の持続可能な発展に対する森林セクターの可能性を最大化することをねらいとした具体的な行動について触れている。また、第3回会合では、地球環境問題、特に生物多様性保全、気候変動緩和、砂漠化防止などの解決を促すような持続可能な森林経営のさらなる推進が確認され、@各国そして管理レベルでの基準・指標の改善と実施、A欧州環境閣僚会合との協力による、B木材及び非木材林産物の健全な利用の促進、C気候変動の緩和、土壌侵食防止など森林生態系の役割の評価−の実施がうたわれている。
欧州森林閣僚会合の連絡事務局はオーストリア及びポルトガルにあり、ホームページも開かれている(Ministerial Conference on the Protection of Forests in Europe: Liaison Unit Vienna, Marxergass 2, A-1030 Vienna, Austria、Liaison Unit in Lisbon, Av. Joao Crisostomo, n.o 26-28 1050 Lisboa、http://www.mmm.fi/english/mi nkonf/)。
(3)タラポトプロセス
1978年、ブラジル、ボリビア、コロンビア、ギアナ、ペルー、スリナム、ベネズエラの7カ国が署名したアマゾン協力条約(発効は1980年)は、各国のアマゾン地域での天然資源の合理的な開発を促進すること、そして同時に経済成長と環境保護の均衡を保つことが目的である。1992年のUNCEDを契機に世界の共通語となった持続可能な開発という概念は、このアマゾン協力条約加盟国の活動を活発化させている。例えば1994年10月以降、季刊公報を発行しているが、基準・指標の設定を含んだ条約やその幅広い活動について締約国間の情報交換を促してきた。
1995年2月、ペルー・タラポトに集まった締約国政府はアマゾン地域の森林の持続可能性を測定するための基準・指標に関する報告をまとめた。これが「タラポト提案」と呼ばれるもので、国レベル、管理単位レベル、地球規模的なサービスレベルの3レベルについて基準12と77の指標がある(下表)。経済・社会的な開発とも矛盾のない持続的な森林経営についての提案づくりに向けて、アマゾン地域の森林の持続可能性を定量的・記述的に測定するための仕組みを加盟各国が自国内でつくることができるように環境的な基準も明らかにしたものである。条約加盟国はアマゾン地域の森林にその経済的・社会的な発展を依存しているだけに、この提案によって特異な自然環境であるアマゾンの森林におけるよりよい森林管理・経営の出発点を得たといえる。
表 タラポト提案の基準・指標
1)国レベル:7基準、47指標
基準1:社会・経済的便益
収入・生産・消費に関する指標(8項目)
基準2:政策・法律 森林の持続可能な開発のための制度(4項目)
林業における投資と経済成長に関する指標(4項目)
文化的・社会的・精神的必要性と価値の指標(4項目)
基準3:持続可能な林業生産(5項目)
基準4:森林の被覆と生物学的多様性の保全(8項目)
基準5:水土資源の総合的保全(4項目)
基準6:森林の持続可能な開発に関する科学技術(6項目)
基準7:アマゾンの持続可能な発展を推進するための組織力(4項目)
2)管理単位レベル:4基準23指標
基準8:法的・組織的枠組み(3項目)
3)地球規模的サービスレベル:1基準7指標
基準9:持続可能な林業生産(5項目)
基準10:森林生態系の保全(6項目)
基準11:地元の社会経済便益(9項目)
基準12:アマゾン森林の経済・社会・環境面での貢献(7項目)
各国の実行能力と経済的、生態学的、政治的、社会的、制度的条件の中でのタラポト提案の基準の妥当性、指標の適用性国家会合を分析することを目的に、1995年以降、1997年1月までに、コロンビア、エクアドル、ペルーにおいて3回開かれている国家会合には加盟国の政府関係者、NGO、産業界などから参加を得ている。この中で基準・指標に関連して制度的な限界、科学的・専門的な基礎づくりのための仕組みづくりの必要性、持続可能な森林開発を促進する枠組みづくり、市民社会の参加と協力などが議論されている。
またこの会合では指標の適用についての分析がなされ、指標の見直しや指標の適用手法などについて新たな提案がなされている。77の指標のうちおよそ91%にあたる70指標について適用できるとされている。また、コロンビア、エクアドル、ペルーの3カ国でコンセンサスがあった指標が53(約69%)となっている。さらにタラポト提案を改訂するための新たは提案には、持続可能な森林経営を求めるコミュニティのニーズが満たされること、有効な水資源の活用方法を改善するための仕組みを特定すること、用語定義を確立することなどが盛り込まれた。タラポトIIと呼ばれる新たな基準・指標が合意された。これはアマゾン協力条約加盟各国における森林の持続可能性を測定するための手段となり、政治的義務を強化することになった。
カテゴリー 指標の数 全指標数 コンセンサスあり コンセンサスなし 適用できない 0 1 1 あまり適用できない 0 6 6 適用可能 26 14 40 適用しやすい 27 3 30 合計 53 24 77
(以上タラポトプロセスについては第11回FAO世界森林会議資料より)
アフリカ大陸における持続可能な森林経営の基準・指標づくりの中心は熱帯湿潤地域であった。世界的に進む基準・指標づくりに関するどのイニシアティブにおいてもこのような過程にこれまで参加していない地域を積極的に取り込むことの重要性が強調されている流れの中で、乾燥、半乾燥地域は特にそのターゲットとなってきた。
1995年11月にケニア・ナイロビで開かれた乾燥アフリカにおける持続可能な森林経営の基準・指標に関するUNEP/FAO専門家会合には、基準・指標策定に取り組む各イニシアティブの代表やその他の国際機関を迎え、14人の専門家が各国から招かれた。主な議題は、
の5つであった。会合では、乾燥アフリカプロセスにおいて考慮されるべき原則とガイドラインが以下のように挙げられた。
ナイロビ専門家会合の報告は翌月のアフリカ森林野生生物委員会第10回会合に承認された。乾燥アフリカ地域での持続可能な森林経営のための基準・指標づくりをさらに進めるために、専門家会合レポートを各国へ送り、議論・改訂・適用すること、UNEPとFAOはこのプロセスを監視・支援することが勧告された。
これを受けてUNEPとFAOは乾燥アフリカ地域における基準・指標の実施に向けた課題を扱うワークショップを再度ナイロビで1997年に開催している。下表はこのワークショップで検討された乾燥アフリカプロセスの基準・指標である。
乾燥アフリカの基準・指標
基準1 炭素循環サイクルへの寄与を含めた森林資源の保持と改善 基準2 森林エコシステムにおける生物多様性の保全と強化 基準3 森林エコシステムの健康・活力・総合力の保持 基準4 森林とその他の林地の生産機能の保持と強化 基準5 森林経営の保護機能の保持と強化 基準6 社会経済的便益の保持と強化 基準7 持続的な森林経営のための法的、制度的、政策的枠組みの妥当性
(以上乾燥アフリカプロセスについては第11回FAO世界森林会議資料より)
中近東における持続可能な森林経営のための基準・指標は1996年10月エジプト・カイロで開催された持続可能な森林経営の基準・指標に関するUNEP/FAO専門家会合に始まる。この会合には中近東諸国から14人の専門家とArab Centre for Studies of Arid Zones and Drylands(ACSAD)などの地域機関から3人のオブザーバーが参加した。この場で国家レベルの基準・指標が提案された。
基準1:森林資源の範囲(4項目)
基準2:森林地域における生物多様性の保全
生態系に関する指標(4項目)
基準3:健全、活力および統合力
種に関する指標(4項目)
指標(3項目)
外的要因に関する指標(1項目)
基準4:生産能力と機能(4項目)
森林の健全性に関する指標(2項目)
人類学的要因に関する指標(6項目)
基準5:保護および環境機能
保護に関する指標(4項目)
基準6:社会経済機能および条件の維持と開発
土壌消失に関する指標(5項目)
経済条件に関する指標(9項目)
基準7:法的・組織的枠組み(9項目)
便益の分配に関する指標(6項目)
森林に関するステークホルダーの参加に関する指標(4項目)
引き続き開かれた中近東森林委員会(New East Forestry Commission)第12回会合においても、持続可能な森林経営のための基準・指標は以下のとおり、主な議題となった。
この会合では中近東地域特有の問題を特定する一方、専門家会合で提案された基準・指標の実施のために以下の4つの点について提案を行った。
さらなる議論が、1997年7月にエジプト・カイロで開催されたFAO主催の中近東における持続可能な森林経営フォーカルポイントワークショップに引き継がれている。