持続可能な原材料調達
公開研究会「輸送用バイオ燃料利用の持続可能性と社会的責任−ブラジル報告を中心に」を開催しました
地球・人間環境フォーラムは、国際環境NGO FoE ジャパン、バイオマス産業社会ネットワーク、日本ブラジル・ネットワークと共催で、2007年5月15日、「公開研究会「輸送用バイオ燃料利用の持続可能性と社会的責任−ブラジル報告を中心に」を開催しました。
公開研究会では、外務省在リオデジャネイロ日本国総領事館専門調査員の福代孝良さんをゲストスピーカーに、ブラジルのエタノールを中心としたバイオ燃料の現状と課題について報告していただきました(注1)。ブラジルにおけるエタノールの主たる原料はサトウキビですが、サトウキビは米国のトウモロコシと比べ、投入エネルギー当たりの生産エネルギーも高く、生産コストも低いという優位性があります。現在サトウキビの作付け面積はは560万ヘクタールであり、今後生産の増大は可能とされていますが、一方、生産管理や燃料輸送という観点からの検討、またセラード地域(注2)への開発圧力という意味では、綿密な計画策定が必要です。
続いて、当フォーラム・満田夏花より、パーム油の持続可能性に関する認証に向けた取組について報告しました。パーム油の持続可能性に関する原則と基準、トレーサビリティの確認、検証システムなどは、持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)において検討されています。RSPOでは、生産及び各CoCにおける検証を行い、将来的には、エコラベルのついたパーム油が市場にでまわることを目指しており、環境・社会コストの内部化、限りある土地資源の中での供給量の限界を認識する手段という意味では期待できそうです。
さらにバイオ燃料需要の高まりにともない深刻化する可能性がある食糧との競合、不足する土地の問題について、「環境・持続社会」研究センター理事の佐久間智子さんからもお話いただきました。佐久間さんは、従来、欧米の穀物輸出戦略の一環として、対外依存度を高めてきた途上国の農業生産構造が、穀物のバイオ燃料原料としての需要急増の中で、さらに脆弱になる可能性があることを指摘。また大量に穀物を輸入している日本の食料供給構造にも影響を与えることに警鐘を鳴らしました。
最後に、バイオマス産業社会ネットワーク理事長の泊みゆきさんから、「持続可能性に配慮した輸送用バイオ燃料利用に関する共同提言」(注3)に関する経緯や背景についてお話いただきました。泊さんは、「バイオ燃料」を何でも「エコ燃料」と呼ぶことは適切ではないこと、燃料需要の削減や廃棄物・残渣の活用も含めた総合的な視点が必要であることを訴えました。
研究会には関連する企業やNGOなど、200人近くの方々にご参加頂き、活発な質疑・議論を行いました。
当日プログラムおよび配布資料は下記からダウンロードできます(すべてpdfファイル)。
●プログラム&講師紹介
●発表資料
ブラジル・バイオ燃料の現状と展望:環境・社会面からの課題
福代 孝良/外務省在リオデジャネイロ日本国総領事館 専門調査員
認証の可能性とその課題〜パーム油を例に
満田 夏花/地球・人間環境フォーラム 主任研究員
バイオ燃料利用拡大による食糧との競合問題
佐久間 智子/「環境・持続社会」研究センター 理事
輸送用バイオ燃料の持続可能性:共同提言
泊 みゆき/NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事長
(注1)講演内容はご個人の見解を述べられたもので、日本政府の見解ではありません。
(注2)セラード:ブラジル中部、中西部に広がる灌木草原地帯。生態系のホットスポット。
(注3)国際環境NGO FoEジャパン、地球・人間環境フォーラム、バイオマス産業社会ネットワークが2007年2月に発表しました。詳細はこちらからダウンロードできます。
●「持続可能性に配慮した輸送用バイオ燃料利用に関する共同提言」(文字のみ、PDF)
●「持続可能性に配慮した輸送用バイオ燃料利用に関する共同提言」(パンフレット、図・写真入り、2MB)